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『アルファブロガー』 FPN (翔泳社)

アルファブロガー

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 多くの人から読まれトラックバックされる、強い影響力をもったブロガーを「アルファブロガー」という。

 Future Planning Netというグループが「日本のアルファブロガーを探せ」というアンケートを2004年と2005年におこなったが、本書は2004年度のベスト11に選ばれた11人のブロガーのインタビューをまとめた本である。

FPNは現在は活動を休止しているということだが、投票結果のページは今でも閲覧可能。2005年度の結果も公開されている。)

 投票した人たちと畑が違うのか、11人のうちわたしがのぞいたことがあるのは梅田望夫氏の「英語で読むITトレンド」だけである。山本一郎氏の「切込隊長BLOG」と、finalvent氏の「極東ブログ」、田口元氏の「百式」は聞いたことがある程度、他のblogは存在すら知らなかった。

 サーチエンジンにばかり頼っていると必要な範囲しか見なくなるので、時には本書のような本で間口を広げるのはいいことだと思った。

 Webが出てきた時と違うのは本業との密着度合である。日本の個人Webサイトは趣味の色彩が強いが、blogは本業と関連しているものが多い印象がある。特に本書に登場したblogの場合、大体が本業とリンクしているようだ。自分用のデータベースでもあると答えている人が複数いるが、blog(> Weblog = Web + log)とはもともとそういうものだった。

 blogの更新にあてる時間は一様に30分から1時間と答えているが、それだけの時間で中味のある記事が書けるのは、本業と重なっているからだろう。

 人気のあるblogは本業の方にも影響をおよぼす。blogのおかげで新規の仕事が増えたり、営業が楽になったという人がすくなくない。「マーケティング社会時評」のR30氏は出版社で雑誌を担当していたが、blogで表現欲が充たされたので、別分野の会社に転職したとのことである。

 業界ウォッチ的なblogが多いのは、日本でblogが注目されはじめた2004年時点のアンケートだということが関係しているかもしれない。blogをいち早く書いたり、読んだりしはじめたのはIT業界のトレンドに敏感な人たちだった。2005年の結果はもう少しばらけているような気がする。

 Webが世に知られるようになった1996年から1999年頃にかけて、有力Webサイトの内容を紹介したり、URLを電話帳のように集めた本がおびただしく出版されたが、blogの場合はあまりない。URLリストを紙の本で出すなどという馬鹿げた企画がなくなったのは結構なことだが、本書のように作り手にじっくり話を聞いた本はもっと出てもいい。

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