『「格差」の戦後史――階級社会 日本の履歴書』橋本健二(河出書房新社)
「河出ブックス」の創刊ラインナップ紹介、続いては、橋本健二さんの『「格差」の戦後史――階級社会 日本の履歴書』です。
橋本さんは、武蔵大学社会学部教授。専攻は社会学。データを駆使して日本社会の階級構造を浮き彫りにする研究を積み重ねられており、また、趣味と研究を兼ねて「居酒屋考現学」を提唱されています。
今回の本は、近年活発になっている格差や貧困をめぐる論議に「戦後」という少し長いスパンの視点を与えると同時に、同じく近年活発になっている戦後史の問い直しという文脈には「格差」という切り口を与える、非常に参照のしがいのある日本社会論必携の一冊です。
橋本さんから読者のみなさんへのメッセージです。
「戦後復興期、高度成長期を経て現代にいたるまで、それぞれの時期にはその時代に特有の格差があり、これが政治や社会のあり方に大きな影響を与えてきました。本書は、格差という視点から戦後日本の全体像を描こうとしたもの。戦後史の概説書としても、楽しく読んでいただけると思います。」
目次(章タイトル)は以下のとおりです。
序 章 舞台装置は階級構造――「フィガロの結婚」と「天国と地獄」をめぐって
第1章 格差をどうとらえるか
第2章 格差縮小から格差拡大へ――戦後日本のメガトレンド
第3章 貧しさからの出発――敗戦から1950年まで
第4章 「もはや戦後ではない」――1950年代
第5章 青春時代の格差社会――1960年代
第6章 「一億総中流」のなかの格差――1970年代
第7章 格差拡大の始まり――1980年代
第8章 日本社会の再編成――1990年代
第9章 新しい階級社会の形成――2000年代
ぜひ押さえておきたいデータも満載です。
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橋本健二の、「この〈選書〉がすごい!」
①石井寛治『日本の産業革命――日清・日露戦争から考える』朝日選書、1997年
日本経済史の大家が、長年の研究成果を惜しげもなく詰め込んだ一冊。近現代史の、まさに必読書です。
②岡本哲志『銀座四百年――都市空間の歴史』講談社選書メチエ、2006年
著者がライフワークとする、銀座研究の成果をわかりやすくまとめたもの。豊富な地図や建物の図解は、文庫や新書には収められない精密なもので、選書ならではの企画です。