『竹内好――アジアとの出会い』丸川哲史(河出書房新社)
河出ブックス創刊第3弾、来年1月上旬発売のタイトル2点をご紹介しています。
2点目は、丸川哲史さんの『竹内好――アジアとの出会い』です。
丸川さんは、明治大学政治経済学部准教授(東アジア文化論・台湾文学)。20世紀東アジアの視点から、現在の大陸中国、台湾情勢についても活発に発言していらっしゃいます。
今回は、戦後思想史において独特の光彩を放ち、ナショナリズムやアジア主義の問題を考える上で不可欠な仕事を残した竹内好の思想を、魯迅、周作人、武田泰淳、京都学派、毛沢東、岸信介という6つの思想的出会いをとおしてアクチュアルに問い直します。
なお、本書は、河出ブックスのシリーズ内シリーズ、【人と思考の軌跡】の最初の1冊として刊行いたします。人物とその思想にスポットを当てたものを1つのラインとしてまとめていきます。続刊準備中ですのでご注目ください。
丸川さんから読者のみなさんへのメッセージです。
「21世紀はアジアの時代だ、と言われている。しかしアジアは、想定されるほど自明なものではない。それは、(漢語で)亜細亜とも(カタカナ語で)アジアとも表記されるなど、多分に縁遠いものなのだ。だからその意味で、アジアは、思考の前提であると同時に思考する対象そのものでなければならない。アジアと出会うこと、その出会い方が重要なのだ。」
目次(章タイトル)は以下のとおりです。
はじめに 竹内好と出会うということ
第二章 周作人との出会い―― 日中戦争の文化空間
第三章 武田泰淳との出会い――人間と歴史
第四章 京都学派との出会い――「世界史」の書き換え
第五章 毛沢東との出会い――現代中国と「近代の超克」
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そして、丸川哲史の「この〈選書〉がすごい!」
①白井聡『未完のレーニン――<力>の思想を読む』(講談社選書メチエ、2007年)
ソ連・東欧などの「社会主義圏」崩壊後の世界を読み解くためには、是非ともレーニンを読む必要がある。しかしそれは、従来の読み方ではなく、レーニンの思想が持った内在的な「力」をとりだすことを通じて可能となる。
②毛利嘉孝『ストリートの思想――転換期としての1990年代』(NHKブックス、2009年)
2009年は派遣村により始まった。80年~90年代にかけて廃れてしまったように見えた階級の構図は、空間を思想の対象とすることによって蘇るかもしれない。ストリートに宿る力を可視化することが、今求められている。
③小林敏明『廣松渉――近代の超克』(再発見日本の哲学、講談社、2007年)
マルクスの思想は、もはや外来思想ではない。マルクスの予言を参照枠として、日本も含む現代世界が構成されてきたからだ。日本においてマルキストたることが孕む豊かな経験(思想経験と実践経験)を理解することは、まさに近代日本を理解することに繋がる。