『心霊の文化史――スピリチュアルな英国近代』吉村正和(河出書房新社)
ご無沙汰いたしました。
、飯沢耕太郎『写真的思考』の2点を刊行いたしました。ぜひお手にとってご覧ください。
また、創刊ラインナップの橋本健二『「格差」の戦後史』が、昨日の朝日新聞書評にて絶賛されました。こちらもぜひご覧ください。
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さて、河出ブックス創刊第3弾となる、来年1月上旬刊行予定の2点をご紹介していきます。
まずは、吉村正和さんの『心霊の文化史――スピリチュアルな英国近代』です。
吉村さんは、名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授(西洋神秘思想史・ヨーロッパ文化史)。『フリーメイソン――西欧神秘主義の変容』(講談社現代新書)というロングセラーもお持ちです。
19世紀後半のイギリスを席巻した心霊主義。降霊会、骨相学、神智学など、広い裾野を持ちながら、現在は懐疑的な目で見られがちなこの現象が、ダイナミックな精神運動として存在していた時代を多面的に読み解くのが今回の本です。
吉村さんから読者のみなさんへのメッセージです。
「これまで心霊主義へのアプローチは、あまりにも興味本位に傾きすぎていたという印象があります。心霊主義は文化史・思想史上では主流となったことはありませんが、たとえば19世紀末から20世紀初頭の抽象絵画、分析心理学(ユング)、レッチワース田園都市などが登場してくる精神的マトリクス(母胎)の役割を果たしています。同じように周縁的なテーマである「フリーメイソン」の場合もそうでしたが、本書がヨーロッパの主流文化を見直す契機になればと思っています。」
目次(章タイトル)は以下のとおりです。
序 章 心霊主義の誕生
第1章 骨相学、人間観察、催眠術
第2章 心霊主義と社会改革
第3章 神智学とオカルト
第4章 心理学との融合
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そして、こちらもお楽しみください。
吉村正和の「この〈選書〉がすごい!」
①森孝一『宗教からよむ「アメリカ」』(講談社選書メチエ、1996年)
アメリカ合衆国の建国過程において「宗教」はさまざまな形で関与したが、その傾向は現代においてもなお継続しているという視点から、モルモン教、アーミッシュ、人民寺院などを読み解いている。多民族国家アメリカの統合原理について理解を深めてくれる本。
②川崎謙『神と自然の科学史』(講談社選書メチエ、2005年)
普遍的な学問であるように見える近代自然科学も、西欧文化が独自に生み出した個別文化の出来事であることを、平易な語り口で説いている。科学を日本語と日本文化という文脈の中で認識しようとすることの危うさについて気づかせてくれる。
③青木保『文化の翻訳』(東京大学出版会UP選書、1978年)
本書によると、異文化理解とはたんに他者を理解し、他者の文化を自国文化に翻訳することではなく、文化の多様性と差異性の中に人類の純粋文化の可能性を求めていくという姿勢が必要である。表層的な異文化理解のあり方に警鐘を鳴らす一書。