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第1位 『夜のピクニック』 恩田陸

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羨ましいと私は思った。夜を徹して歩き通す歩行祭。たった一夜の出来事が、特別なものに変わるそのことを彼らは感じる事ができたから。「あの頃」をあっさり卒業してしまった私は損をした気分になる、ほんとうに切なくまぶしい物語なのです。
〔本町店・酒井和美〕

ただ歩くだけでは奇跡は起こらなかった。一緒に歩いたひと、これまで一緒に歩んできた人達がいたからこそ、貴子と融にとって奇跡の一夜となった。読後、共に歩んだ親友に会いたくなった。
〔グランドビル店・高橋雅之〕

80kmという長い距離を夜通しひたすら歩き続ける苛酷な学校行事「歩行祭」。登場人物たちはその行事の中で、それぞれ思いや悩みをかかえて歩いていきます。部外者がまぎれこんだり、誕生日をむかえたり、秘密の賭けを実行したり。ただ歩くだけの行事の中に、様々な驚きや発見や変化や友人と時間をわかちあう喜びがあり、すべてを歩き終えた後には清々しい達成感を感じることができます。自分の学生時代を思い返さずにはいられない素敵な青春小説です。
〔新宿南店・倉成陽子〕

この本には「青春」がぎっしりと詰まっている。俵万智の有名すぎるデヴュー歌集のなかに「青春という字を書いて横線の多いことのみなぜか気になる」という歌があるのだけれど、そういう青春の混沌というかぐちゃぐちゃさ加減を、美しく、ほほえましく描ききった秀作。共学、とくに公立の進学校に通った人たちにはぜったいツボだと思います。
梅田本店・星 真一〕 

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