『グーグル Google - 既存のビジネスを破壊する』佐々木 俊尚(文藝春秋)
Googleの技術の凄さや人間の優秀さはよくわかるのだが、 実際のところGoogleのビジネスモデルはどうなっているのか? Googleに弱点は無いのか? Googleは何を狙っているのか? といった疑問がわいてくる。 本書はこのような疑問の答を与えてくれる。
Googleの収益のほとんどは広告である。 石川のメッキ工場や羽田の駐車場のような、 ITと全然関係なさそうに見える会社が Googleを利用して広告を出すことによって利益を出すことができたという実例が 本書では詳しく解説されている。 既存の大メディアに広告を出しても効果がないような小さなビジネスの広告を大量に集めることによって Googleが莫大な利益をあげているという話から、話題の「ロングテール」を実感することができる。 ネット上での広告に関して圧倒的な力を持っていることがGoogleの資金の根源らしい。
Googleに限らず、 インターネットで情報やサービスを提供しているサイトの収益の大半は 広告なのだが、 広告を出すとき最も有効なのはGoogleだという現状のため、 こういうビジネスの間ではGoogleは評判が悪いらしい。 Jacob Nielsenは 「Webを食い物にする検索エンジン」 という記事を書いている。
> 「ウェブサイトを改良しても検索エンジンが儲かるばかり」 > ペイドサーチ(検索連動型広告)は、ウェブサイトが実現する > 稼ぎを根こそぎ持っていってしまう検索エンジンからの解放、 > これは、これからの数年間、ウェブサイトにとっての > 重要な戦略的課題の一つとなっていくだろう。自分のサイトを検索表示してくれるGoogleにはひたすら感謝するべきなのに逆ギレしてしまうのは、 Adwordsにまったく歯がたたないからだろうか。 情報を生成/編集しているビジネスよりも、 索引だけ作っているGoogleの方が儲かるのは確かに不愉快だろう。 メーカーが一銭も儲からないのに問屋だけ儲けているようなもので、 そんな商売が長続きするとも思えないが、将来はどうなるのか考えさせられる。
世界のあらゆる情報を握りつつあるGoogleは「神」と呼ばれることは多いし、
本書では強力な「司祭」と例えられているが、
本書で詳しく紹介されている「Google八分」や中国政府への軟弱な態度の例を見ると、
神にしてはかなり脆弱なところが見てとれる。
生まれついて最強な神というよりは、気付いたら神になっていた優等生のようなものだから、
率先して変なことはしないのかもしれないが、
キレイゴトを言う割には高飛車に出たりするしことがあるし、
本当にタフな相手には突っ張れないという特徴があるらしい。
大きな会社というものは沢山の実直な人々やタフな人々が支えているものだが、
優等生だけ集めてるからこういう雰囲気が滲み出てくるのかもしれない。
最近は積極的にロビイストを雇ったりしているようだが、
どのような神になるのか見守りたいものである。
私は「さわらぬ神にタタリなし」という方針で。