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プロの読み手による書評ブログ

『としょかんライオン』ミシェル・ヌードセン さく ケビン・ホークス え 福本友美子 やく(岩崎書店)

としょかんライオン

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「あなたの図書館をみつけて。」

忘れもしない、小学校1年生のとき。


実家から歩いて5分もかからないところに、図書館ができた。

嬉しかった。

年子でひとつ下の妹と、ひたすら通った。

夏休みは朝ごはんを食べたらでかけ、

お昼になったら家に帰り、

昼ごはんを食べたらまたでかけ、

ゆうやけこやけ」の音楽がまちに流れるまで読み、

ひとり3冊ずつ選んでかり、

寝るまでにあわせて6冊の本を読み、

また、次の朝、返しにいくのだった。

長い長い夏休み、そうやって毎日すごしたことを

今でもよく覚えている。

1階が子ども室になっていて、ステキな司書さんがいた。

丸いめがねをかけていて、みつあみのおさげをしていた。

偶然、母の友達だとわかり、

ますます図書館通いが楽しくなった。

私たちは、安心して自分の世界に没頭できる時間を

図書館ですごすことができた。

ずっと本ばかり読んでいたわけではない。

いれかわりたちかわりやってくる友達と会う場所。

そこへいけば誰かがいる、とみんな知っていた。

やさしくておもしろい司書のお姉さんとのおしゃべり。

ちょっと手が空いているときにねだって、

紙芝居をよんでもらったり、

おすすめの本を教えてもらったり。

背表紙からカードをすっとだして、

返却日のハンコを押すのが、憧れだった。

混んで来ると、となりの公園で鬼ごっこ。

疲れたらもどってきて、

緑のじゅうたんが敷いてあるところでごろんとねっころがって

また、本を読んだ。

私にとっての最初の「居場所」は

図書館だったんだな、

この絵本に出会って、確信した。

ライオンは、わたし。

今のこどもたちに

今の図書館に

こんな「居場所」が、

まだ、

あるだろうか?


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