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『待ち行列理論 』大石進一(コロナ社)

待ち行列理論

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ネットワークの性能を見積もるために、待ち行列は避けて通ることのできない理論体系である。しかし、ポアソン分布、アーランB式、呼損率などを前に討ち死にする人が後を絶たない。特にネットワークエンジニアの一大イベントである10月第3週の情報処理試験TE(NW)を前にした夏の陣では戦死者が多く、兵どもが夢の後の感がある。

待ち行列自体は決して難しい理論ではない。むしろ複雑な利用率などの見積もりをすっきりした数式に抽象化してくれる効果があり、使いこなせれば強力なツールとなるものである。習得に意外に手こずる人が多いのは待ち行列理論よりも、その前提にある確率・統計論が分かっていないことに原因が求められるケースが多い。本書では冒頭で確率に関する章が設けられており、高校以来すっかり失念していた読者でも無理なく待ち行列に入っていける効果がある。マクドナルドでレジに並んだときにケンドール表記がすぐに浮かぶまで読み込めば完璧である。

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