書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

『1冊でわかる暗号理論 』パイパー,フレッド/マーフィ,ショーン(岩波書店)

1冊でわかる暗号理論

→紀伊國屋書店で購入

暗号理論をきちんと学ぼうとすると、数学を避けて通ることはできない ~ と、ここまで聞いて暗号の勉強をやめにしてしまう人がほどんどである。結局暗号の概説書は、数式を書かないようにして(書くと売れないから)上っ面だけをなでて読者を分かった気にさせることに終始せざるを得ない。

その中で本書が秀逸なのは、数式をできるだけ(皆無とは言わない)使わないようにして、なんとか暗号理論を語り尽くしてやろう!という気迫に満ちているところである。これは私も講義でやったことがあるが、へとへとになる。数式一本で済むところを何時間も解説するのは拷問のようですらある。それをやってのけた本書には賛辞を送りたい。暗号の基本理論をおさえておくと、どういう局面が暗号にとってリスクがあるのか、といった判断ができるようになるので、IT時代を生きる上でのリテラシとして理解しておきたい。時間がなければ、9章の「日常生活での暗号」だけでも目を通しておくといいだろう。

→紀伊國屋書店で購入