売上ランキング:第四週
先日「途中経過」を発表した舌の根も乾かぬままですが、
週間ランキングの発表も忘れてはいけません。
折り返し地点とも言える第四週のランキングです!
■ワールド文学カップ世界ランキング集計方法
参加している作品の売上冊数を文庫本1冊=1ポイント、単行本1冊=3ポイントとしてそれぞれの所属チームの得点を集計し、世界ランキングを決定致します。 ランキングは毎週、一週間の売上を集計して「今週のランキング」として発表(「往年の名選手たち」「日本文学代表選抜会」は別枠にて発表)。会期終了の5月17日以降に最終的なランキングを発表する予定です。
もはや前週のランキングが、
何の参考にもならないことが証明されつつある週間ランキング。
今週は以下の通りになりました!
売上ランキング(第四週)
集計期間:4/22~4/28
【ワールド文学カップ】
第1位 24pt 子ども心の国ドイツ
第2位 19pt アメリカ最先端
第2位 19pt 反逆の国アメリカ
第4位 18pt 狂気の温床フランス
第4位 18pt 言語の国ハンガリー
次点 ウリポを生んだフランス、ザ・ルーツナイジェリア
【得点王】
11冊 エーリヒ・ケストナー『飛ぶ教室』
(所属チーム:子ども心の国ドイツ)
【往年の名選手たち】
第1位 6pt ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』
第1位 6pt アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』
第2位 5pt レフ・トルストイ『イワンのばか』
第2位 5pt サキ『サキ短編集』
【日本文学代表選抜会】
第1位 14pt 円城塔『Self-Reference ENGINE』
第2位 8pt 古井由吉『野川』
第3位 7pt 安部公房『壁』
第3位 7pt 大江健三郎『性的人間』
第5位 6pt 吉田健一『金沢・酒宴』
第5位 6pt 色川武大『怪しい来客簿』
皆様、ケストナーがとうとう爆発しました! 今まで『モモ』の陰に隠れていた『飛ぶ教室』が怒濤のゴールラッシュ、この2トップだけで何と20ptを叩き出しています。「8歳から80歳までの子どもたちへ」というケストナーの言葉が伝わったかのごとき得点力、この勢いを維持できれば、多くの人にとって世界は美しいものへと生まれ変わることでしょう。第2位には同着でアメリカの2チームがランクイン! 「アメリカ最先端」ではコーマック・マッカーシーの『ブラッド・メリディアン』が単独で12ptを上げ、ピンチョン、ナボコフ、パワーズも二列目から果敢にパスを送り出しています。「反逆の国アメリカ」ではサリンジャーとブコウスキーという超身勝手な二人がディフェンスラインをこじ開け、そこにダイベックとケルアックが割り込んでくるというほとんど乱闘に近いパフォーマンスを繰り広げました。第4位も同着で、「狂気の温床フランス」ではレーモン・ルーセルの『ロクス・ソルス』と『アフリカの印象』が文庫本なのに1500円越えというハンデを背負いながらもゴールを量産、「言語の国ハンガリー」ではこれまでも好調だったアンドレ・ケルテスの輸入写真集『On Reading』に加え、カリンティ・フィレンツの『エペペ』、エステルハージ・ペーテルの『ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし』、アゴタ・クリストフの「悪童日記三部作」がバランス良く得点を上げました。
ところで、先日の「途中経過」で紹介した「死のグループ」でスペインやオランダが苦戦している中、善戦しているのが「ザ・ルーツナイジェリア」。トリッキーなプレーで相手を驚かせたオコチャやカヌーのように、文学でもトリッキーな異次元小説を書いたチュツオーラが活躍を見せています。ただ彼のような選手だけだと、どうしても独善的なワンマンチームになりがち。それをうまくチームプレーとして昇華させているのがチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの『アメリカにいる、きみ』です。今秋の国際ペン東京大会2010にも正式に招待されたアディーチェの書く小説は、これまでのアフリカ文学の概念を変えたものであり、今後のアフリカ文学の新しい基準となりうるものでもあります。夏には河出書房新社から新刊も出るようなので、大注目の選手です。
アディーチェ来日の報は、クッツェーの翻訳者でもあるくぼたのぞみさんのホームページ「エスペランサの部屋」で紹介されておりました。