『Afgan』Frederick Forsyth(Penguin USA)
「いつもながら読み応えのあるフレデリック・フォーサイスのスリラー」
フレデリック・フォーサイスの作品はいつも出だしからスリルいっぱいの早い展開で読者をぐいぐいと引き込んでいくのだが、今回の作品は史実にもとづく物語が前半部分にあったので、その部分は展開が分かっていたので少し心に余裕を持って読み出すことができた。
物語は、携帯電話の逆探知で追いつめられ射殺されたアルカイダ重要メンバーが持っていたコンピュータを解析すると、大規模テロが計画されていると予想されるところから始まる。
重要な情報を掴んだCIAと英国の特殊部隊SASだが、そのテロがどこで、どんな形で、そしていつ実行されるのか分からない。
CIAとSASはアルカイダ内部に諜報員を送り潜入捜査をすることを決める。しかし、テロの計画を知るアルカダトップと接触するのは難しい。
諜報員として選ばれたのが英国軍人のマイクだった。彼は小さい頃バグダッドで過ごし、祖母がインド人だったため、肌も浅黒く髪も黒い。
しかし、 部族や出生家族が重要とされるアラブ組織のなかに潜入させるためには彼がイギリス人であることを知らせてはならない。そこで、マイクはアメリカがテロリストを収容しているグアンタナモ基地に勾留されているアフガニスタン人イズマットになりすましスパイ活動をおこなうことになる。
イズマットが育ったアフガニスタンの地域ではパシュトゥン語か使われていたので、マイクがおかしなアラビア語を使っても怪しまれないし、それにアルカイダ内部で彼を知る者も少ない。しかし、マイクの正体がばれる可能性は高く、もし正体がばれればマイクの命はない。
「 教育をあまり受けてない者が話すパシュトゥン訛りの下手なアラビア語を使えるか」とマイクの上司は聞く。
「多分使える。しかし、ターバン頭の奴らが、本当にこの男の素性をよく知っているアフガニスタン人を連れてきたら、どうなる」とマイクは聞く。
上司は沈黙をもってマイクに応える。
こうしてマイクのアフガニスタンでの諜報活動が始まる。
300ページある物語のうちの半分ほどは、旧ソ連のアフガニスタン侵略、その後のタリバンの台頭、9・11連続多発テロとアメリカのアフガン攻撃の様子が語られる。
何故、アフガニスタンが今のような状況にあるのかを知ることができ、そのうえ上質なスリラーの醍醐味を味わえる作品だ。