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『Time Traveler : A Scientist's Personal Mission to Make Time Travel a Reality』Dr. Ronald L. Mallett(Basic Books)

Time Traveler : A Scientist's Personal Mission to Make Time Travel a Reality

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「タイムマシンの作り方」


 「想像力は知識よりも大切だ。知識には限りがあるが、想像力は世界を巡る」

 アインシュタインの言葉だ。

 このアインシュタンの言葉のように、人々の想像力をかりたてる研究をしている博士がいる。それがコネチカット大学教授ロナルド・マレット博士だ。彼の研究対象というのが、な〜んとタイムマシンなのだ。

 しかしタイムマシンと言っても、荒唐無稽な話ではない。マレット博士のタイムマシン理論はアインシュタイン相対性理論を土台にしたもので、この機械を本気で作ろうとする組織がマレット博士を中心にコネチカット大学に設けられ、研究が進んでいるのだ。

 この本は過去への旅の可能性を科学的に証明した理論を発見したといわれる理論物理学者のマレット博士のメモワールだ。

 過去のあの時に戻ることができたなら、今度は違うやりかたで人生をやり直してみたい。過去に戻ることができるなら、愛する人の人生をよりよいものにしてあげたい。そんなことを誰でも一度は考えるだろう。

 マレット博士は10歳のときに父親を失ってしまう。愛する父親を亡くしたマレット博士は失意のなかに一筋の光を見つける。それがタイムマシンだった。H・G・ウェルズの本を読みタイムマシンという時を巡る機械に魅了され、いつかタイムマシンを開発し過去に遡り、父親に煙草をやめ今すぐ病院にいくように忠告し父の命を救いたいと強く願う。

 彼はタイムマシンの開発を胸に理論物理学者への道を進んで行く。しかし、黒人である彼は同僚の学者や社会から「変人」のレッテルをはられるのを恐れ、本当に信頼した人物にしかタイムマシンの話をしない。

 「私がタイムトラベルに興味を持っていることを話さないのは合理的な理由によるものだった。私の所属する学部の中からも外からも変人というレッテルをはられない方がよかった。」とマレット博士はこの本で語っている。

 しかし、アインシュタインが言うように本当に大切なものは知識よりも想像力だ。

 マレット博士は優れた理論物理学者であり、論文も数多く発表しコネチカット大学の教授となる。その後、彼は遂に過去への旅が可能であることを示す理論を確立し、物理学界に発表をする。

 最近では、スパイク・リー監督がこの本の映画化を発表し注目を集めた。映画化により、マレット博士の研究がさらに人々の関心を集めるのは間違いないだろう。


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