『A Lion Called Christian : The True Story of the Remarkable Bond between Two Friends and a Lion』Anthony Bourke, John Rendall(Broadway Books)
「ロンドンで育てられたライオン、アフリカに帰る」
今回読んだ『A Lion Called Christian』は1971年に一度出版されているが、ビデオクリップをネット上で観ることができるYou Tubeからの国際的大人気を受け、加筆・修正がくわえられ再出版されたものだ。売れ行きは好調で、今年3月に出版されてすぐにニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー・リスト上位に入った。
You Tubeでの人気について著者たちは次のように語っている。
「2007年の終わり頃に、僕たちのビデオがYou Tubeに流れているというメールを受け取り始めた。誰がYou Tubeに載せたのか知らないが、あまり気にもしなかった。でも、08年になってウィットニー・ヒューストンの曲をバックに付けたものが流れ始め、それを観た人が知り合いに送り遂には世界中の人が観るようになった」
You Tubeのこのビデオクリプはアメリカやその他のテレビで紹介され、ハリウッドのプロデュサーが著者たちにコンタクトを取ってくるようになった。
この本に興味のある人は、読み始める前でも読んだあとでもいいので、一度You Tubeのビデオクリップを観ることをお勧めする。
物語の方は1969年に、オーストラリアからロンドンを訪れていたアンソニー・エイス・バークとジョン・レンダルが高級百貨店ハロッズで売られていた子供の雄ライオンを買ったところから始まる。
ふたりはライオンにクリスチャンという名前をつけ、ロンドンで飼い始める。この間にクリスチャとふたりの間に固い絆が産まれるが、市内でいつまでもライオンを飼い続けることはできない。
動物園に寄付をするのも、サーカースに売りショーライオンとしての生活を送らせるのもふたりにはよい考えとは思えない。
ライオンの子供を買ったことでふたりに大きな責任が与えられる。
ふたりは「野生のエルザ」で有名なジョージ・アダムソンとの協力を得てチリスチャンをアフリカの野生に帰す決心をする。
野生に戻ったライオンの生涯は短い。しかし、管理された長い生涯よりも、自由で思い切り生きられる生涯をクリスチャンに与えてあげようと決めたのだ。
その後、ふたりはクリスチャンとともにアフリカに渡り、アダムソンの指導のもとでクリスチャンに野生に戻る訓練を施す。そして、準備が整ったころにクリスチャンを野生に戻した。
その1年後、飼い主のふたりはアフリカに戻りクリスチャンと再会する。この再会がYou Tubeで観られる場面だ。
「クリスチャンは以前と全くかわらない深い愛情をみせた。昔のいたずらや新しいふざけ方をしてみせた。…牙は1インチ半の白いアイボリーだ!…間違いなく一群のボスだ」
ロンドンでライオンを飼う話は心温まり、彼をアフリカの野生に戻す苦労も心にしみる。英語の読みやすさも魅力だ。