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『James Dean Died Here : The Locations of America's Pop Culture Landmarks』Chris Epting(Santa Monica Press)

James Dean Died Here : The Locations of America's Pop Culture Landmarks

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「アメリカのボップ・カルチャーが分かる本」

 『James Dean Died Here』。訳すと『ジェームス・ディーンはここで死んだ』となる。小説やノンフィクションではなく、どちらかというと事典のような本だ。

 内容は、アメリカのポップ文化にまつわる場所の紹介。例えば、タイトルにもあるように、ジェームス・ディーンが交通事故で死んだ場所や、アップル・コンピューター社が誕生したガレージなど600を超える場所が載っている。

 著者はクリス・エプティング。広告会社でコピーライターやクリエイティブ・ディレクターとして活躍。2001年にはサーフ・シティ・アドバタイジング社を設立。これまでに、プロバスケットボール・チームのロサンゼルス・クリッパーズ、コンピューター店のコンピュUSAなどの広告を手掛けてきた。

 この本はソウル歌手のマービン・ゲイが父親に撃たれて死んだ家、映画『アメリカン・グラフィティ』が撮影された街、伝説の銀行強盗ボニーとクライドが撃ち殺された場所、女性ポップ歌手キャロル・キングの名アルバム『タペストリー』のアルバム・カバーが撮影された家など面白い項目でいる。

 極めつけだったのは、アメリカのロックバンド、ビーチボーイズのヒット曲『ファン・ファン・ファン』の歌詞に関するものだった。『ファン・ファン・ファン』には、お父さんのサンダーバードを乗り回すカリフォルニア・ガールが出てくる。歌のなかではその女の子がハンバー店に行くのだが、その店は実在するとこの本にある。ホーソン通り11969番地にある「フォスターズ・フリーズ」というハンバーガー・ショップという店がそれで、いまも営業を続けているらしい。この歌を作曲したブライアン・ウィルソンが、父親のサンダーバードに乗った友達の女の子を実際にここでみかけたことがあるという。こんな、わくわくするようなエピソードが収められているのも嬉しい。

 もちろん、ライト兄弟が初めての飛行に成功した場所、父の日のお祝いが始まったとされる教会、レーガン大統領が撃たれた場所など、音楽に関係しない項目もたくさん紹介されている。

 各項目には正確な住所がついていて、なかには電話番号まで収められているものもある。写真も多い。いうなれば、ポップ文化からみたアメリカン・スタディだ。

 また紹介されている場所は、アメリカ50州に渡っているので、ガイドブックとして読むこともできるだろう。

 暫くはこの本で、いろいろ楽しめそうだ。アメリカのポップ文化に興味のある人にお勧めの本だ。


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