『Daddy is Fat』Jim Gaffigan(Crown )
「NYの2ベッドルーム・アパートで5人の子供を育てる法」
ニューヨークに住んでいるコメディアン、ジム・ガフィガンはバワリーと呼ばれるイーストサイド・ダウタウンにある通りの5階建てエレベーター無しのビルに住んでいる。住んでいる部屋は2ベッドルームという居間のほかに2部屋あるタイプのアパートだ。
そして、子供が5人。はぁ〜? 僕は彼のこのプロフィールを読んで考えてしまった。実はこのバワリー通りは僕のブリーカー通り沿いのアパートから5分程度のところでよく知っている通りだ。この通りにかつてCBGBというニューヨークパンク発祥のクラブがあったと言えばどんな感じの通りか想像ができると思う。
そして、僕が住んでいるのは6階建てのエレベーター無しの2ベッドルーム。だが子供は一人。それでも、スペースが足りなくて困っている。同じような環境で子供が5人。想像するだけで気が遠くなる。
そして、今回読んだのがジムのその5人の子供と奥さんの生活を描いた『Daddy in Fat』。言うならば5人の子供をニューヨークの部屋数の足りないアパートで育てる奮闘記だ。コメディアンの本らしく、センテンスは短く、簡潔でパンチが利いている。ひとつの話は2、3ページで短く、約60本の話が収められている。
僕が最も気になったのは、基本的には3部屋のアパートでどう5人が寝ているのかというもの。
それについては「How to Put Five Kids to Bed in a Two-Bedroom Apartment」という話に書いてあった。面白かったので紹介しよう。
ジムの家の居間と2つのベッドルームには全て幼児用のベッドがある。そして1つのベッドルームにはその幼児用ベッドの他に2台のシングルベッドがある。夫婦のベッドルームには、幼児用ベッドとキングサイズのベッド。
子供たち3人は2台のシングルベッドと幼児用ベッドのあるベッドルームに寝て、あとの2人は夫婦のベッドルームのキングサイズベッドと幼児用のベッドに寝る。そしてジムと奥さんは居間で仕事をしたり、本を読んだり、テレビを観たりして貴重な「大人の時間」を過ごす。
そして2人が寝る時間になると「移動」が始まる。まず、夫婦のベッドルームの幼児用ベッドに寝ていた子供を居間にある幼児用ベッドに移す。そして、シングルベッドに寝ていた女の子を隣に寝ている女の子のシングルベッドに移す。最後にキングサイズベッドに寝ていた男の子を開いたシングルベッドに移す。
これで居間の幼児用ベッドに小さな子ひとり。ひとつのベッドルームに女の子ふたり、男の子ひとり、それに幼児用ベッドに寝ている小さな子。こうすると夫婦のベッドルームのキングサイズベッドにはジムと奥さんだけ、というアレンジメントになる。
そして、ジムと奥さんが寝る準備を始めると、子供たちが起きてきて、7人全員がキングサイズベッドで寝ることになるという。ハハハ。
その他に驚いたのが家族の夏や春のバケーションの取り方だった。彼らのバケーションはバスを借りるという。バンや小型バスではなく、日本で言えば修学旅行で使うような大型バスだ。ツアーバスというロックスターが全米ツアーをやる時に使う仕様のもので車内にはバックベッドが6台、大きなベッドが1台あるという。家族が7人にもなると飛行場に行ったり、列に並んだりするだけで大変(家を出ようとするだけでもう体力を使い果すという)で、バスならば家の前まで来てくれて、荷物もどんどん積めるのでいいらしい。
しかし、ツアーバスを借りるのは高いので、このバケーションに合わせてジムはその土地でコメディショーをやる。逆に言えば、ショーのスケジュールに合わせての家族移動だ。
その他、5人の子供と一緒にニューヨークの地下鉄に乗る話や、バースデーパーティの話(5人子供がいるとその友達のバースデーパーティだけで凄いことになる)、学校の送り迎えの話とか、ニューヨークの子育てがどんなものか分かるだけに可笑しく、しかし笑えないような話でいっぱいだった。
ニューヨークで子供を育てる親として同情しながらも心温まる本だった。