書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『ナショナリズムと宗教-現代インドのヒンドゥー・ナショナリズム運動』中島岳志(春風社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 ここに新しい時代の研究がある、そう感じた。著者、中島岳志の専門は、「南アジア地域研究」の…

『Piero della Francesca』Marilyn Aronberg Lavin(Phaidon)

→紀伊國屋書店で購入 日本でも立命館大学八村教授によるVRによる伝統芸能の解析や、慶應義塾大学によるグーテンベルグ聖書をはじめとする和洋貴重書のデジタル化など、デジタル技術を駆使した芸術、書物の解析が活発に行われている。 本書の著者ラヴィン教授…

『サイバー経済学』小島寛之(集英社新書)

→紀伊國屋書店で購入 数理工学・数理情報学を専門とする私にとっては、実社会の問題を理解したり解決したりするために数学が効果的に使われている場面に出くわすとわくわくする。そこで使われている数学がそれほどむつかしくない場合には、特にそうである。…

『名前の漢字学』阿辻哲次(青春新書)

→紀伊國屋書店で購入 「日本人の名前の由来をひも解く」 私は仕事上、外国との行き来が多い。住んでいるのがアメリカだから正確には、「日本との行き来が多い」と書くべきである。飛行時間は14時間ほどだが、乗り換えがうまく行かないときには18時間近く…

『ベートーヴェン研究』児島新(春秋社)

→紀伊國屋書店で購入 “学者の研究”と聞くと、敷居が高そうに感じるものだ。専門用語が並び、難解な言い回しが続く。「今日は日曜日です」ですむものを「さまざまな考察と明治以降の近代日本における歴史的習慣をふまえた上で、本日が日曜日である、という事…

『無人島 1969-1971』ジル・ドゥルーズ(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 「ドゥルーズの声」 ドゥルーズ『無人島 1969-1971』 ドゥルーズがガタリと共同で執筆し、『アンチ・オイディプス』や『千のプラトー』などを出版したころに発表していた論文を集めた「ドゥルーズ思考集成」の第二巻に相当する。とくに…

『Clara's Grand Tour : Travels with a Rhinoceros in Eighteenth-century Europe』Ridley, Glynis(Atlantic Books)

→紀伊國屋書店で購入十八世紀前半のこと、雌サイ、クレアの見世物巡業はヨーロッパ各地で大好評を博した。クレアはサイ専用の馬車に乗ってオランダのライデンからベルリンやライプチッヒなどのドイツ各地、ウイーン、フランスのランスやパリ、リヨン、マルセ…

『上原ひろみ<br>サマーレインの彼方』神舘和典(文)白土恭子(写真)(幻冬舎)

サマーレインの彼方" title="上原ひろみサマーレインの彼方" src="http://bookweb.kinokuniya.co.jp/imgdata/4344010566.jpg" border="0" /> →紀伊國屋書店で購入 「Spiral」上原ひろみ(TELARC) 「会いたい人 努力と根性、そして気合い 今にも涙があふれそ…

『The Hours』Michael Cunningham(Picador USA)

→紀伊國屋書店で購入 「The Hours by Michael Cunningham」 A sheer delight for literati and artists alike, Cunningham’s third novel seems at first a precarious and ultimately hopeless enterprise. A contemporary author’s assertion that he can …

『失敗の本質』野中 郁次郎 ほか(中公文庫)

→紀伊國屋書店で購入 あまりにも有名な書籍なので、このブログの趣旨からは外れてしまうのではないかと思ったのだが、出版後20年を経過したこと、続編が市場に投入されたこともあり、取り上げてみた。 研究のドメインとしては、とてもオーソドックスな組織論…

『思考のフロンティア 変成する思考-グローバル・ファシズムに抗して』市野川容孝・小森陽一・守中高明・米谷匡史(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 1990年に東西ドイツが統一し、翌年ソ連共産党が解散、ソ連邦が消滅を宣言した。さらに、1993年…

『Specimen Days』Michael Cunningham(Farrar, Straus and Giroux)

→紀伊國屋書店で購入 「Specimen Days by Michael Cunningham」 As an avid Michael Cunningham devotee and a modest Walt Whitman scholar, I was more than a little curious about the latest literary endeavor of the widely acclaimed author of The …