書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

第26位 『希望格差社会』山田昌弘

→紀伊國屋書店で購入 (筑摩書房/1,995円/4480863605) 「宝くじでも当てるしか…」と思っているワタシももはや負け組なのでしょう。親の職業や収入で、子どもの将来はスタート時点で既に差がついている。頑張っても先が見えている今の日本社会を身も蓋もなく…

第26位 『沼地のある森を抜けて』梨木香歩

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/1,890円/4104299057) ぬか床がうめく?ファンタジー?半信半疑で読み始めた。ところが、細胞、菌類、遺伝子、生物の授業で習った事が出てくる。読後、あまりに壮大な余韻に引きずり込まれてしまった。一番近い言葉で表わすな…

第29位 『天使のナイフ』薬丸 岳

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/1,680円/4062130556) 子供たちはみんな天使。そして、その天使達は、誰もが、心にナイフを持っている。被害者が、加害者に、そして、その加害者が、やがて被害者になる。少年の犯罪を、加害者と被害者の両面からよく見ていく…

第30位 『本当はちがうんだ日記』穂村 弘

→紀伊國屋書店で購入 (集英社/1,470円/4087747662) こんなにダメダメな俺は本当の俺じゃない!もっとカッコイイ自分―エスプレッソを心から美味しいと思い、風邪を引いた女の子のお見舞いに気のきいたオシャレな品をさらりと持っていけるデキル男としての人…

今年の特別賞!!『くうねるところすむところ』平安寿子

→紀伊國屋書店で購入 今年の特別賞!!(文藝春秋/1,750円/4163239901) 人生変えようと思うなら、これぐらいの力技が必要なのかもしれない。がけっぷちの女二人が、何も分からないのに土建屋の世界に飛び込んで、やっぱり奮闘、死闘の連続。なのに結局、あ…

番外編(POP賞編) 『生きる意味』上田紀行

→紀伊國屋書店で購入 (岩波書店/777円/400430931X) バブルの時代に土地や株を買ったわけでもなく、被害者でもなく、まして加害者でもなく、なのにこの言い知れぬ閉塞感は何なのだろう。それは 生きる意味の不況 だと著者は言う。幸せを求めることが、いつ…

番外編(POP賞編) 『帰ってきたもてない男』小谷野敦

→紀伊國屋書店で購入 (筑摩書房/735円/4480062467) ひえ~、あのもてない男が帰ってきた!何!?しかも結婚したのか?え、でも3年で離婚したのか?なんだ、よかった~、やっぱりもてない男はそうでなくっちゃ(不謹慎でごめんなさい)。 で、結婚生活はど…

番外編(POP賞編) 『誤読日記』斎藤美奈子

→紀伊國屋書店で購入 (朝日新聞社/1,575円/4022500328) 「本は誤読してなんぼ」、「誤読術さえ身に付ければ、どんな本も無駄にはなりません」といって10箇条の「誤読方法」を紹介した上、ここ約五年間にわたる新刊本約175冊を紹介してます。そういえばこん…

番外編(POP賞編) 『家族と住まない家―血縁から“暮らし縁”へ』島村八重子・寺田和代

→紀伊國屋書店で購入 (春秋社/1,785円/439333504X) 築150年の古民家に異世代の男女7人が暮らす「松蔭コモンズ」をはじめ、あえて「家族と住まない」ことを選択した10人の住まいと個人史を紹介した本。他人と心地よく生活するための距離感やスキルは、家族…

番外編(POP賞編) 『ケプラー予想』ジョージ・G・スピーロ

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/2,520円/4105454013) 「船倉にもっとも効率よく丸い砲弾を積み込む方法とはどんなものだろう?」一見単純に見える問いであり、解答らしきものも誰が見ても納得できるものでした。しかし、その「解答らしきもの」は本当に正し…

番外編(POP賞編) 『踏切趣味』石田 千

→紀伊國屋書店で購入 (筑摩書房/1,575円/4480816402) 中央線と西武新宿線(池袋線でも可)、比べたらどっちが「勝ち」だろう。 知名度、人気度、沿線グルメ度、カルチャー度etc…。まあ、申し訳ないが10戦9勝ぐらいの割合で中央線の勝ちだろう。でもひとつ…

番外編(POP賞編) 『嗤う日本の「ナショナリズム」』北田暁大

→紀伊國屋書店で購入 (NHK出版/1,071円/4140910240) 71年生まれの新進気鋭の社会学者による60‐00年代論。革命を夢見ることを世代的に許されず、コピーライターがこの世を皮肉る時代をリアルタイムで理解するには幼すぎ、「俺たちひょうきん族」にはかろう…

番外編(POP賞編) 『蜂起』森巣 博

→紀伊國屋書店で購入 (金曜日/1,890円/4906605028) 徹夜必至の、テロリズム推奨、娯楽とエロス満載の非国民小説。国家とか、国民とか、民族とか、セキュリティとか、ええい纏めて粉砕じゃあ、といわんばかりの『ナショナリズムの克服』実践篇。小泉首相じ…

番外編(POP賞編) 『ポーの話』いしいしんじ

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/1,890円/4104363014) うなぎ女、ひまし油、メリーゴーランド、うみうし娘…。妖しい名を持つものたちとの交流の中で少年ポーは何を見、聞き、感じたか。清濁併せ呑む世界の中でポーは成長していく。世の中には色んな人間の色々…

番外編(POP賞編) 『ヒッチコック「裏窓」ミステリの映画学』加藤幹郎

→紀伊國屋書店で購入 (みすず書房/1,365円/4622083035) ヒッチコックの名作「裏窓」を新たな観点から徹底解説した刺激的な1冊。というのも、事件が起きるのが当たり前のミステリ映画において実は殺人は行なわれていない、と著者は主張しているのです。ヒッ…

『人権について』ジョン・ロールズ他(みすず書房)

→紀伊國屋書店で購入 「人権をめぐる名講義集」 この書物はアムネスティ・インターナショナルが毎年オクスフォード大学で開催している連続講座の一冊で、一九九三年の講義を集めたものだ。毎年開催されているこの連続講座はかなり読み応えのあるもので、今回…

『キリスト受難詩と革命-1840~1910年のフィリピン民衆運動』レイナルド・C.イレート(法政大学出版局)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 フィリピン、否第三世界の誇るべき歴史書が、優れた日本語訳によって読めるようになった。まず…

『Wonderful Town: New York Stories from The New Yorker 』David Remnick (Editor)(Random House Publishing Group)

→紀伊國屋書店で購入 「Wonderful Town: New York Stories from The New Yorker」 The exquisite prose in this short story collection is no surprise considering the magazine that brings it to us. The New Yorker has been a staple of New York life…

『心は実験できるか』スレイター(紀伊國屋書店)

→紀伊國屋書店で購入 もしあなたが心理学を学んだ経験があるならば、本書は必読の書だろう。といっても、心理学の勉強に役立つからではない。心理学の教科書に出ている様々な人物の生の声、あるいは背景が描かれているからだ。 この本は、かつて心理学を学ん…

『London Compendium : A Street-by-street Exploration of the Hidden Metropolis』Glinert, Ed(Penguin Books Ltd)

→紀伊國屋書店で購入 ロンドンの町並みから強い印象を受ける人は意外と少ないのではないかと思う。それぞれをよく見ればジョージアン様式(John Nash設計のブラントンのパビリオンなど)、ヴィクトリア朝様式(国会議事堂など)、エドワード朝様式などに大別…

『Aをください』練木繁夫(春秋社)

→紀伊國屋書店で購入 Aは「エー」ではなく、「アー」と読む。ドイツ語だ。先日この書評ブログに彗星のごとく登場した、世界を股にかけて活躍中のピアニスト、練木繁夫が初めて書き下ろした本である。練木がいかに文才に長けているかは、書評空間にある投稿文…

『祈りの懸け橋―評伝田中千禾夫』石澤秀二(白水社)

→紀伊國屋書店で購入 「[劇評家の作業日誌](10)」 今年の日本演劇学会「河竹賞」ならびに演劇評論家協会主催の「AICT賞」をダブル受賞した本書について、先日記念シンポジウムが行なわれた。題して「演劇史の再考--田中千禾夫をめぐって」。パネラ…

『田中希代子』萩谷由喜子(ショパン)

→紀伊國屋書店で購入 「ピアニストの星」 現在の若いピアニストは幸運である。アジア全体の音楽レヴェルが欧米で認められ、どこの音楽院、音楽大学でも東洋からの生徒は歓迎される。アジアからの生徒を持つことは、その国での知名度に繋がる。良い教えをすれ…

『アンボス・ムンドス』桐野夏生 (文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 BGM(Nickelback) 「女性の「凄み」 見てはいけないもの 見せてはいけないもの」 「俺が待ってくれと言ったら、あなたは「私にはいつも今しかない」と言って拒んだ」ドキッとする。 閉店間際のHMV、金曜の夜は心なしか人が少ない。新譜を…

『廃墟論』クリストファー・ウッドワード(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 「時の廃墟」 先月のこと、ドイツのドレスデンの聖母教会の再建が完成したというニュースが流れた。式典にはメルケル首相も参列して、はなやかに祝ったようだ。写真をみると立派に修復され、周囲もぴかぴかだ。ぼくが五年ほど前にドレス…

『歴史を学ぶということ』入江昭(講談社現代新書)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 「授業で使える」、まずそう思った。本書は、歴史学のテキストとして書かれたものではないだろ…

『ことばの由来』堀井令以知(岩波新書)

→紀伊國屋書店で購入 「どっこいしょとは何?」 私のアメリカ生活は35年になろうとしている。英語中心の生活に慣れたとは言え、ときには単語の意味は判っても、何を意味するのかが判らないイディオム(慣用語句)に出会うことはある。例えば、「Tongue in …

『ルネサンスの哲学』エルンスト・ブロッホ(白水社)

→紀伊國屋書店で購入 「世界書物の解読」 「なぜルネサンス哲学なのか」。訳者ならずとも自問したくなるところである。あのブロッホがなぜルネサンス哲学の講義をするのだろうか。ブロッホが教えていた当時の東ドイツにあったライプチヒ大学では、「講義の素…

『図解 社会学のことが面白いほどわかる本』浅野智彦(中経出版)

→紀伊國屋書店で購入 「社会学教員にとっては「救い」の一冊」 「社会学がどういうものか1冊で分かる日本語の本を教えてください」――こんな何とも虫がいいニーズを日々肌で感じながら、私は大学教員生活を送っています。でも考えてみると、大学生のニーズと…

『古代ギリシア・ローマの料理とレシピ』アンドリュー・ドルビー,サリー・グレインジャー(丸善)

→紀伊國屋書店で購入 「想像力のレッスン」 ぼくは料理が好きで、夕食を何にするかは毎日の楽しみだ。レシピ本もたくさんある。でも長らく利用リをしていると、マンネリになることがある。結局はいくつかのスタイルの料理法に還元されるからだ。現代思想もい…