書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2007-05-16から1日間の記事一覧

『ひきこもりの国』マイケル・ジーレンジガー著、河野純治訳(光文社)

→紀伊國屋書店で購入 自分が取材を受けた本の書評は書きづらいものだ。まして、そのテーマが私自身の専門と重なっている場合は。 本書の原題「遮られた太陽 Shutting Out the Sun」は、天の岩戸に隠れた天照大神のエピソードを連想させるが、テーマはむしろ…

『世界の日本人ジョーク集』早坂隆(中公新書ラクレ)

→紀伊國屋書店で購入 たわいがないことに、考えるヒントがある。冗談、戯れ言、揶揄には、世の中の虚々実々が宿っている。そう考えて、日本人について、海外で語られている笑い話を集めてみたら、どうなるか。この本はその一例を示して見せた。いわゆるエス…

『高丘親王航海記』澁澤龍彦(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「物語という舟」 マルキ・ド・サドからコクトー、バタイユにいたるまで、多くのフランス文学を日本に紹介してきた澁澤龍彦にわたしが惹かれたのは随分と昔の話で、強烈な西洋臭を放つエロティックなオーラと、奇を衒(てら)うようなスタ…

『写真ノ中ノ空』 谷川俊太郎=詩、荒木経惟=写真 (アートン)

→紀伊國屋書店で購入 10日、東京八重洲の某所に国公立病院と主要な私立病院から神経内科医が集まっていた。 障害者自立支援法と医療制度改革とが病院経営に、ひいては難病患者の生活や意思決定にどのような影響を及ぼすのか、各地の情報を交換し今後の対策…

『ナショナリズム-その神話と論理』橋川文三(紀伊國屋書店)

→紀伊國屋書店で購入 「日本のナショナリズムの源流を探る」 この書評サイトの執筆を引き受けたとき、まずはじめに思い浮かんだのがこの本だ。 本書はかつて存在した紀伊國屋新書の一冊として、1968年に出版された。以降、版型を変えて復刻され、現在に至っ…

『The Secret of Lost Things』Sheridan Hay(Doubleday)

→紀伊國屋書店で購入 「ニューヨークのストランドは好きですか」 1927年に創設された本屋ストランドは、僕のニューヨークのアパートから歩いて15分ほどの所にある。ストランドは日本にも好きな人がたくさんいる本屋だ。置いてあるのは古本と1年以内に…

『わたしの城下町-天守閣からみえる戦後の日本』木下直之(筑摩書房)

→紀伊國屋書店で購入 ●城をめぐる戦後日本の連想ゲーム 『わたしの城下町』とくれば自動的に、 ♪格子戸をくぐり抜け……という歌詞が浮かんでくるが、 本書は昭和歌謡を扱ったのでもなければ、わが城下町讃歌でもなく、 「天守閣からみえる戦後の日本」を考察…

『アルバムの家』女性建築技術者の会(三省堂)

→紀伊國屋書店で購入 「もやもやの家に目盛りを打つ『間取り図』物語」 中学1年生を末っ子に4人の子どもと暮らす夫婦が、マンションのリフォームにあたってワンルームを希望した。周囲は、本当に子どもたちはそれでいいのかしらと心配するも、当人たちはいた…

『メディア・リテラシー教育──学びと現代文化』デイヴィッド・バッキンガム、鈴木みどり監訳(世界思想社)

→紀伊國屋書店で購入 「「啓蒙」の引きうけ方」 メディアリテラシー。直訳すれば「メディアの読み書き能力」である。台湾では「媒体素養」というそうだ。こちらのほうが直感的にわかりやすいかもしれない。 このカタカナ言葉はここ数年、日本でもかなりひろ…