書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2007-10-09から1日間の記事一覧

『ホフマンと乱歩 人形と光学器械のエロス』平野嘉彦(みすず書房)

→紀伊國屋書店で購入 本当はフロイトその人が一番あぶないのかも マラルメの「純文学」的難解詩にアキバ系人造美女の構造を見た立仙順朗氏のエッセーに感動させられた『人造美女は可能か?』を読んだ後、今年の新刊なら平野嘉彦『ホフマンと乱歩 人形と光学…

『ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足――神経内科からみた20世紀』 小長谷正明(中公新書)

→紀伊國屋書店で購入 「多彩な著名人の病状から歴史を診断する」 医者の書いた本がしばらく続く予定である。今回は神経内科医。 著者の小長谷正明氏の医学論文は、私でさえいくつかは存じ上げていたのだが、著者みずから、あとがきで「今回はさまざまな考え…

『草の根の軍国主義』佐藤忠男(平凡社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 敗戦時14歳の少年兵だった著者、佐藤忠男は、戦後映画評論家になった。著者が、アジアの映画、…

『公と私の系譜学』レイモンド・ゴイス(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「公とは何か」 公的なものと私的なものの境界が時代とともに変動していることは、アレントの『人間の条件』などでも指摘されてきたが、この書物はギリシア、ローマ、中世、現代における公的なものと私的なものの領域を、具体例で考えよ…