書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2007-11-28から1日間の記事一覧

『宇宙をプログラムする宇宙』 セス・ロイド (早川書房)

→紀伊國屋書店で購入 目下、情報理論による科学の再編成が進んでいるようだが、本書は多分、その最前衛に位置する本である。 著者のセス・ロイドはMITの機械工学科で量子コンピュータの開発にあたっている第一線の研究者である。機械工学科で量子コンピュー…

『宇宙を復号する』 チャールズ・サイフェ (早川書房)

→紀伊國屋書店で購入 以前、フォン=バイヤーの『量子が変える情報の宇宙』を読み、情報理論が大変なことになっているらしいと知ったが、どう大変なのかが本書によってかなり見えてきた。「情報」という概念は今や宇宙論の核心にすえられ、科学のすべてが「…

『愛の矢車草』『愛の帆掛舟』橋本治著(筑摩書房)

→『愛の矢車草』を購入 →『愛の帆掛舟』を購入 「愛の湯豆腐、あるいは昭和の抒情性について」 橋本治のものなら何でも読むという熱心な読者ではなかったので、ぼくは昭和から平成の最初に発表された橋本のこの2冊の短篇集を読んでいなかった。もともと新潮…

『「三十歳までなんか生きるな」と思っていた』保坂和志(草思社)

→紀伊國屋書店で購入 「思考の散歩道」 「これは自問自答の本です」と最初にある。「私にとって書くことは考えつづけることだ」とも記されている。なるほど、結論と見えたものは、すぐに新しい問いに転じてつぎの章にバトンタッチされる。山頂を目指すのでは…

『ギリシァ悲劇を読む-ソポクレス「ピロクテテス」にみる教育劇』吉田敦彦(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](32) 今年の演劇界は異例なほど、ギリシア悲劇を題材とした舞台が多かった。2500年前に起源を持つギリシア悲劇に、特段エポック的な何かがあったわけではないが、現状が見えにくくなってくると、演劇の原点たるギリ…