書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

第8位 『会社はこれからどうなるのか』 岩井克人

www.kinokuniya.co.jp 経済書を読んで、久し振りにすっきりとした、明るい気持になった。少し長い時間の流れのなかで、経済や会社の現在と未来を考える、このような本が今まであまりに少なかったように思う。著者は理論経済学者であり、内容も極めて原理主義…

第9位 『いま、会いにゆきます』 市川拓司

www.kinokuniya.co.jp まるで1冊の本が長いラブレターのように、切なかった。この気持ちを他の人とも共有したい、そう強く感じたので選びました。誰かを大切に想うこと、想われることの尊さ、素晴らしさを感じずにはいられない作品です。〔京橋店・雑誌担当〕…

第10位 『無名』 沢木耕太郎

www.kinokuniya.co.jp 我々は父のことをどれくらい知っているだろうか。父の父としての面しか見ていないのではないだろうか。著者は父が残した俳句の中に、今まで知らなかった姿を見出し、父の原点に、そして自らの原点に立ち帰る。無名の生・無名の死の潔さ…

第11位 『FLY,DADDY,FLY』 金城一紀

www.kinokuniya.co.jp “痛快”とはまさにこのことか!と、この本を読んで感じました。中年男性の、それもしょうもない男性が家族のため体を張って戦う姿がなんとも涙をそそってしまう。(おかし涙も!!)また、とりまく少年達がなんとたくましくかっこいい事…

第12位 『輝く日の宮』 丸谷才一

www.kinokuniya.co.jp これぞ大人の小説!丸谷才一の集大成とも言うべき傑作。思わず拍手喝采したくなるシーンや思考の淵に落とされる話が次から次に展開。教養とムダ知識が混ざり合い、読む者に新しい世界を聞いてくれる。久しぶりに小説を読んだ、と思わず…

第13位 『捨てるな、うまいタネ』 藤田雅矢

www.kinokuniya.co.jp 兎に角“一目惚れ”―これがこの本を手にした理由である。通勤電車でも手に馴染む判型、紙質、少々歪んだタイトル・・・全てに「ピン!」と来てしまった。ページを開けばカラー写真満載、手書きイラスト多数、本文の文字は敢えて「タネ」を連…

第14位 『シービスケット』 ローラ・ヒレンブランド

www.kinokuniya.co.jp 自転車修理工からのたたき上げの馬王。謎めいた野生馬馴らしの寡黙な調教師、片目が不自由な騎手、そして脚の曲がった小さな馬シービスケット。登場人物の設定だけで涙があふれ出そうな話。競馬をただのギャンブルと考えていた人もこの…

第15位 『150cmライフ。』 たかぎなおこ

www.kinokuniya.co.jp 150cmだっていいじゃない!!背が低いとなにかと不自由。でも背が低いとなにかと得をする…。低い目線で見る日常生活。ブーツをはくだけで見る世界が変わったり、エスカレーターで上の段になって背の高い人気分を味わったり。ほのぼのし…

第16位 『永遠の出口』 森 絵都

www.kinokuniya.co.jp 主人公の小学校から高校までのあらゆる思い出がつまった一冊。それは女性の読者ならば、皆自分のことが書かれているように感じることでしょう。主人公と一緒に今までの自分を振り返るきっかけになるはずです。そして人はさまざまな人や…

第17位 『ZOO』 乙一

www.kinokuniya.co.jp 短編集というより、傑作集です。私はこの『ZOO』を読み終わったあとに、「すごすぎる!」と深くうなずいてしまいました。ミステリーだけではなく、笑える話もあるんです。乙一を知っている人にも、 「乙一って誰?」と思った人にも大オ…

第18位 『ダーリンは外国人』 小栗左多里

www.kinokuniya.co.jp 外国人との生活ってこんなに楽しいの!!?こんなダーリンを私にも!!ってつい思っちゃった一冊でした。とにかく絵がかわいい!!内容も笑えちゃう!!読んでハッピーになれる事間違いなしです。〔川越店・山崎〕 →紀伊國屋書店で購入

第19位 『葉桜の季節に君を想うということ』 歌野晶午

www.kinokuniya.co.jp 驚きました!やられました。面白すぎ。タイトルも話の流れもすごくスマートで奥深い。登場人物の魅力も充分。これを読まずして何を読む!?生きる希望が、生きる意味が、生きる価値が、そして生きる勇気があふれてきます。〔本町店・岸田…

第20位『理系白書』 毎日新聞科学環境部

www.kinokuniya.co.jp 「理系人への応援歌」これがこの本のモチーフ。モノづくりで生きてきた日本経済を支えてきたのは主に理系の科学技術者。しかし実際は文系が主導してきた日本社会。そして子供の理科離れ…。そんな時ノーベル賞連続受賞というニュース。…

第21位 『バカの壁』 養老孟司

www.kinokuniya.co.jp タイトルのわりに内容が硬くて読みにくそう?「バカの壁」をつくらず是非読んでみて下さい。自分がいかに知ってるつもりで生きてきたかわかります。がこの本の中にはあります。〔京橋店・総務担当〕 →紀伊國屋書店で購入

第22位 『忘れ雪』 新堂冬樹

www.kinokuniya.co.jp どうして女は何年もの間、一人の男を思い続けていられるのだろうか。どうして男は命をかけてまで、一人の女を探し続けるのだろうか。どうして人はこれほどまで人を愛するのだろうか。そう感じずにはいられない純愛小説です。〔福岡本店…

第23位 『光ってみえるもの、あれは』 川上弘美

www.kinokuniya.co.jp 本を読んでいると音楽が流れてくる。そんな本はあるものだと思う。この本を読んでいて流れてきたのは、ブルーハーツの「夕暮れ」だった。登場してくる人達1人1人がそれぞれバランスをとりながら毎日を過している。不安定な中をそれでも…

第24位 『ナショナリズムの克服』 姜尚中、森巣博

www.kinokuniya.co.jp 気鋭の政治学者姜尚中氏と、気鋭の博打渡世人森巣博氏の対話から、日本が、世の中が見えてしまう。ふたりの痛快かつ真剣なやり取りで、ナショナリズム克服の可能性が面白く手軽に読めてしまう。テーマは決して軽いものではないのだが、…

第25位 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 J.D.サリンジャー、村上春樹訳

www.kinokuniya.co.jp 訳者の村上春樹氏が語っているようにこの本はむしろ大人になってしまったひとにこそ読んでほしい一冊です。大人になる過程で失ったものをホールデンは僕たちに呼び覚まさせてくれます。そしてその代償として何を手に入れたか(あるいは…

第26位 『ららら科學の子』 矢作俊彦

www.kinokuniya.co.jp 「殺人未遂に問われ、中国に密航した彼。30年ぶりに還ってきた東京で彼が見たものは。」手塚治虫・星新一・ロバート・A・ハインライン「夏への扉」…あの頃沢山の作家たちが来るべき未来を夢みて、想像して様々な小説を書きました。…

第27位 『超短編アンソロジー』 本間 祐・編

www.kinokuniya.co.jp カフカ、イソップ、ランボー、川上弘美に村上春樹、内田百聞に芥川…。古今東西から集められた短い短いお話。本当に「あっ!!」という間に読めてしまう短編ばかり。どこから読んでも面白い。さてカップラーメンができるまで、いくつ読…

第28位 『不味い!』 小泉武夫

www.kinokuniya.co.jp 各地を廻って不味いものに出合った。本当に不味い。うんー、こんなに不味いものが沢山あるとは。小泉先生の不味さの薀蓄が満載。あまりの不味さに笑えます。〔札幌本店・悦子〕 →紀伊國屋書店で購入

第29位 『ケータイを持ったサル』 正高信男

www.kinokuniya.co.jp 果たして、「人間らしさ」とは何か?現代日本社会をユニークな視点で斬りこむ快作。〔新宿南店・二宮新一〕 →紀伊國屋書店で購入

第30位 『a piece of cake』 吉田浩美

www.kinokuniya.co.jp あ、違います。ケーキの本じゃありません。小説あり、写真集あり、絵本あり…クラフト・エヴィング商會が作った12冊の小さな本が主役です。小さいながらも、ちょっと思いもつかないような、素敵な世界が楽しめますよ。ほんわかとしたこ…

第30位 『“民主”と“愛国”』 小熊英二

www.kinokuniya.co.jp 皆がよく分かったつもりになっていて、実はまったく分かっていないこと。小熊英二氏は『単一民族神話の起源』、『日本人の<境界>』などの著書によって、そのようなことを次々と明らかにしてきた。『<民主>と<愛国>』では「民主」や「愛…

番外編 『ドナウよ、静かに流れよ』 大崎善生

www.kinokuniya.co.jp 邦人カップルがドナウ川に入水自殺、男は33歳識者で女は19歳女子大生。このスキャンダラスにも聞こえる事件を覚えている人はいるだろうか。実際に起こった事件であり、2人の命が失われたのだから「面白い本」として推薦するのは適当で…

番外編 『こんな夜更けにバナナかよ―筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』 渡辺一史著

www.kinokuniya.co.jp 美談ではない。何せシカノはワガママだ。自分を「カリスマ」だと勘違いしているし、エロおやじだし。シカノは人工呼吸器をつけ24時間介助を受けて自立生活を営んでいる筋ジストロフィー者だ。ボランティアや有償の介助者たち離れていか…

番外編 『寺山修司名言集』 寺山修司

www.kinokuniya.co.jp 1983年、47歳の若さでこの世を去って20年。今なお強いイメージを多く持つ不思議な男。万華鏡のように美しく怪しい一冊。『マッチ擦る つかのま海に霧ふかし 身捨つるほどの祖国はありや』しびれます。〔松山店・徳光和子〕 →紀伊國屋書…

『芥川龍之介と腸詰め(ソーセージ)-「鼻」をめぐる明治・大正期のモノと性の文化誌』荒木正純(悠書館)

→紀伊國屋書店で購入 鼻で笑えない新歴史学の芥川論 副題を見ると「鼻」白むしかない(何をしようとしているか即わかってしまうからだ)が、メインタイトルを近刊案内で見た時には、あの怪物的大著『ホモ・テキステュアリス』の荒木氏がついに本気で「日本回…

『CSR 働く意味を問う』日経CSRプロジェクト編(日本経済新聞出版社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 CSR(企業の社会的責任)レポートを、数十集めた。ここ数年、企業は積極的に営利とは直接結…

『土曜日』イアン・マキューアン(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「人の不安の根源に迫る」 正月にイアン・マキューアンの新作を読んで、早くも今年のベストが決まってしまった。いや、二十一世紀の名著に入る傑作かもしれない。 『土曜日』は文字どおり、ある土曜日の出来事を描いた小説だ。未明から…