書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2011-04-18から1日間の記事一覧

『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』 エーコ&カリエール (阪急コミュニケーションズ)

→紀伊國屋書店で購入 記号学者ウンベルト・エーコと脚本家ジャン=クロード・カリエールが本に関する蘊蓄をかたむけた対談本である。 ジャン=クロード・カリエールについてはピーター・ブルック一座の座付作者くらいの知識しかなかったが、IMDBを見ると『ブ…

『明暗』夏目漱石(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「猫を追悼する」 『吾輩は猫である』を処女作とした夏目漱石は、未完の『明暗』を絶筆として、1916年(大正5年)49歳で他界している。僅か10年の執筆人生で、漱石は不朽の名声を残したわけだが、『明暗』は立体的な心理小説として、そ…

『安部公房伝』安部ねり(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「通路の堀り方」 母方からの遺伝だと思うが、筆者は小さい頃から算数が苦手であった。現在、ある学会の事務局で働いており、この時期になると予算だの決算だので「租税公課支出」とか「他会計振替収入」とか「前期繰越収支差額」といっ…