書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『「国民国家」日本と移民の軌跡-沖縄・フィリピン移民教育史』小林茂子(学文社)

→紀伊國屋書店で購入 昨今の博士論文のなかには、とても出版にたえないものがある。脈略のない論文が数本並んでいるだけで、全体を通してなにが言いたいのか、とくに専門外の者にはさっぱりわからないものがある。その点、本書は安心して読むことができた。…

『巨魁』清武英利(ワック)

→紀伊國屋書店で購入 「単なる暴露本とは少しちがいます」 朝日新聞のスクープと連動した暴露本だと思う人もいるかもしれないが、暴露や告発の部分の比重はそれほど大きくない。むしろ清武氏が巨人に在籍した7年あまりに何があったかを、意外と前向きに語っ…

『TPP知財戦争の始まり』渡辺惣樹(草思社)

→紀伊國屋書店で購入 最近の日本の政治は、どうなってしまったのだろう。「昔は良かった」とはつゆとも思わないが、何も決まらない、前に進まない。「末期的」という言葉が脳裏に浮かぶ。「政権交代によって世の中が変わるかもしれない」という期待は、もは…

『アメリカ文学における「老い」の政治学』金澤 哲 編著(松籟社)

→紀伊國屋書店で購入 「老いを受け止める」 長い学生時代を経て、わたしが就職をしたのは29才の時だったが、そのとき真っ先に思ったのは、「あと36年しか働けない! はやく家かマンション買って住宅ローン組まなきゃ!」ということだった。実際に住宅ローン…