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新宿南店仕入だより~2月(奥田英朗『ガール』ほか)

ガール

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【登場する新刊】


ガール』(奥田英朗講談社

銀齢の果て』(筒井康隆、新潮社)

クロ-ズド・ノ-ト』(雫井脩介角川書店

きいろいゾウ』(西加奈子小学館、3月刊行予定、予約受付中)

かみちゅ!』第1巻(鳴子ハナハル、メディアワ-クス)

 

仕入担当者の朝は早い」のがこの業界でも鉄則だが、朝は苦手なのも本音。まず本日発売の「週刊文春」を電車の中で開いて、書評コーナーをチェック。奥田英朗の新刊『ガール』が「現代女性小説の傑作!」と激賞、南店でも初回部数として100冊以上仕入れて店頭では大展開中だが、発売まもない時点で売場から、早くも追加の希望が出る嬉しい状態に。

会社に着いて朝の荷物をさばいた後は、まず売れ筋新刊の追加注文を。筒井康隆が老人たちの殺人バトルをコミカルに描く快作『銀齢の果て』の売行きが好調。早くも2回目の追加をしながら、新潮社営業担当者に他書店の売行きや増刷の予定等を聞く。午後には、『犯人に告ぐ』でミステリー界を制した雫井脩介氏が、切なく暖かい恋愛小説『クローズド・ノート』の発刊を記念して、サイン本作成のため来訪。最近は、文芸作家来訪が急増中。発売とともに来店し、店頭の展開を見学しながら、売場担当者の感触や作品への感想を熱心に聞いて帰られる。売場の担当者も、発売前のゲラ(原稿)をあらかじめ読んでから、その読後感をもとに、展開方法を早めに決めるスタイルが定着。文字通り、売れ筋は本になる前に「つくられる」時代に突入している。

夕方になると、文芸売場の司令塔Sさんから、2月下旬刊の西加奈子きいろいゾウ』のゲラ読みの熱い報告がある。『さくら』は文芸売場の大展開の成果で記録的なベストセラーになっただけに、いまやSさんの「感想」は、初回の仕入数に直結するほど、影響力がある。「そこまで感動したなら、思う存分バーンと店頭に積んでくれ~い!」

業界全体としては、文芸書は伸び悩みではあるが、「書店の現場の感性」が売れ筋をつくりだす新しい時代が来ていることはつくづく実感される。責任重大とはいえ、喜ばしいかぎりだ。

最近、仕入担当者として「コミック」について修業の身である。コミック売場の担当者と激論(?)をかわす毎日。文芸書の世界とはまったく異なった「感覚」が必要不可欠な世界であることをひしひしと実感。新刊『かみちゅ!』第1巻は、好評アニメ作品が、単行本化された形態。瀬戸内海の田舎を舞台にある日突然、「神様」になってしまった女子中学生の生活をほのぼのと描いた作品。中学生が神様になるので「かみちゅ(神中)」と略すらしい(笑)。実際の「大奥」とは設定が逆転(将軍が女性で大奥は男性)している『大奥』(白泉社)や猫の家政婦が主人公の『きょうの猫村さん』(マガジンハウス)等のコミックは、文芸書売場での併売も実施中。従来のコミック読者の枠を超えた売行きがベストセラー化の要因になっている。コミック・アニメ(映像)・ライトノベル・ネット発作品も含めたメディアミックス商品もますます目が離せない時代に。思わぬところから売れ筋が生まれる「驚き」が書店の醍醐味でもあるのだ。

【新宿南店仕入担当・二宮】