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『東京タワーが建ったころ<br> 50年前の私たち』 岩永辰尾 (第三出版)

東京タワーが建ったころ<br>50年前の私たち

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夕日町のひみつBGV

「全てが崩壊した後に
 ・・・
 許してくれよな
 ALWAYS」

街中から8マイルも離れていないというのに、このままでは本当にボロボロで 死にそうだったりする。
世の中の全ての人が■に■て、でも時折、全ての人が優しく思えて、どちらも 辛い思いの繰り返し。いっそのこと、■を聴きながら、左折を間違えた車に■ たら楽な気がする。それくらいのことを書いてくれる作家を捜す。

このところ、朝も夜もベースを効かせた渋いロックを聴く。多少うつむき加減 で、多分しかめっ面した渋い顔をして歩いてるんだろうな、とか思ったりす る。こういう曲を聴く時は、ノロノロヒマそうに前を歩かないでくれよ。増々 ■なる。

死にそうだったりするが、実は…

ここで一旦休止、そして改めて…

が、実は、豊かで嫋やか(たをやか)に年をとりたい、と思っている。

豊かと言っても、むしろ金銭的に豊かの方がそこら辺で出来そうで、でもあえ て難しいだろう精神的に豊かな老後の方を望む。でも今のままでは出来そうも ない。いっそのこと■てくれ。でも、心配するなよ、死ぬはずないだろ。死ぬ 気になればもっとやれるから、だから何にもやらないだけさ。

普通の幸せ、でも個人には特別な幸せ

普通の写真、でも個人には特別な写真

・・・

うちの親父は日曜日になるとよく一人で神宮の六大学野球を見に行った。

朝、母親におにぎりを作ってもらい、我々子供達は、何かと面倒な時代で、そ れも長くて、親父はいつも一人で出かけていった。

うちの親父に大学生活はなかった。戦争の真っただ中で。一度だけ聞いた話 で、親父が指揮をとる部隊が襲撃にあって、仲間が、仲間のほとんどが死ん だ。親父に当たった弾丸は肩から胸を抜けて一命を取りとめた。

親父は倒れるまで、終戦記念日には靖国神社に行っていた。今、問題になる参 拝問題以前の話、いやその以前ではなく、それ以前の次元の問題。仲間が死ん だんだぜ、■が、目の前で、隣りで、■って、■て。どうしてなんだよ、何故 なんだよ、俺達、何で死ななきゃならないんだよ。

今でも覚えている。私が留学したいと言った時「私はもっと若い時に中国に行 ってる」と笑って答えた。

神宮球場で何を思ったのだろう。満員にはなりきっていない、応援団の声が響 くスタンド。応援団のうしろ、少し離れて、少し上の方か、または、まばらな 外野か。

そのおにぎりに、ビールも買ったんだろうな。

神宮の空、野球、応援・・・何を思ったのだろう。

死なない、そう、死なない。

だろう?死なないじゃないか。

そういう学生生活のない親父。

空を見上げて、ビールを飲みながら、これでいいんだ、皆、夢中で、幸せでい いんだ、って。

夕方、山倉のホームラン凄かったよ、と帰る親父は、その後、家の周りを掃除 して、暑い夏の日には水を張って。そして朝夕は家の前で、木刀を振ってい た。剣道の素振りのように、家の前の路地で木刀を振っていた。鉄棒をおいた 小さな、猫のひたい程の庭でもランニングシャツで振っていた。汗をふきなが ら、片手でも振っていた。日曜の夕方は、早めに風呂に入って、時折、一人で 銭湯にも行っていた。

そして、笑点か大相撲の音とともにビールを飲んでいた。

仕事場へはスクーター、その後、スバル360

何でこんな小っちゃな車に乗るんだ?

でも何かこだわりがあったのだろう。

でも、でも・・・

結構、私は、幸せだったんだよ。

普通の幸せ、でも個人には特別な幸せ、だったんだよ。

許してくれよな。

一度で良いから、一緒におにぎりを持って、神宮のスタンドに行きたかったんだよ。

ALWAYS

何れにせよ、私の生活が今のままであることに変りはないし。

私は何か毎日、後ろめたい感じがしている。

・・・

一杯飲み屋のヒロミは竜之介から指輪をプレゼントされる。

静かなそのシーン、そして夕日にかざす。

何か忘れていたもの。忘れてきたもの。

(www.always3.jpから映画予告編へ)

時折、無償に普通の生活に戻りたいと思う。

この異常なまでにボロボロの毎日。

今夜はロックはやめて、静かなアコースティックにするよ。

なあ、いいだろう?

put your head on my shoulder

we'll be walking in the rain

two solitary people, trying so hard to understand

crazy world we live in, gets more crazy every day

oh, little darling, something about the way

I'll always be thinking about you

(from "in the land of dreams" by Stanley Smith)


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