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『論集 川端康成-掌の小説』川端文学研究会【編】(おうふう)

論集 川端康成-掌の小説

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「少女の羽織に触れただけの少年」

自宅の部屋のドアの裏側に
いつも1枚のポスターが貼ってあります

ポスターというよりは、新聞の1面広告なのですが

この部屋は私が使う前は、上の子が使っていて

その子が貼ったものでした

いつもふと、このポスターが気になる時、その水泳選手のゴーグルの位置を合わせる横顔に、かすかに気持ちが通じるかのように、そこに想いをよせる時があります

私はいつも一つのCMが好きでした

いつもふと、このCMが気になる時、今から20年以上前のCMですが、かすかに気持ちが通じるかのように、そこに想いをよせる時がありました

YouTube検索「一秒の言葉」1985年版)

ある日、ある人から、そのCMの話が届きました

私はドキリとして、夜空の満月を観ながら、かすかに気持ちが通じるかのように、そこに想いをよせる時を、そのシンクロニシティを羨み(うらやみ)ました

高校の期末試験で、その国語の試験中に

問題として出た文章に感動して、その日の帰りがけに神保町で買ったのが

川端康成の「掌の小説」でした

問題を解こうと真剣に読むと感動して、それが三島由起夫であったり、安部公房であったり、井上靖であったりしました

その「掌の小説」の2頁程の「雨傘」は、しばし問題を解く事も忘れるほどその描写に感動しました

少女の羽織に触れただけの少年、この1カットだけの為に、この1秒が全てであったかのような映画を創りたいと、試験中に映画のストーリーを思い巡らしました

少年のシャツに触れただけの少女、この1カットだけの為に、この1秒が全てであったかのような映画を創りたいと、今でも想いを巡らす時があります

久しぶりに見た横顔

ドキリとしました

ここに至るまでに

いったい何があったのか

私には知るべくもないけれど

あなたにしか体験し得なかった

無数の1秒1秒は

ココロまでも変えるほど

濃密であったのだと思います

明日からの本番

あなたはきっと

鳥肌の立つようなレースを

見せてくれるでしょう

(中略)

あなたの1秒は

あなたの人生だ

SEIKO

(私の部屋のポスターから)


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