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プロの読み手による書評ブログ

『フランシス・F・コッポラ』村上龍、他(エスクァイアマガジンジャパン)

フランシス・F・コッポラ

→紀伊國屋書店で購入

「私はただ単に忙しくしているだけで何も達成していない気がしてならない
 しかし今なら「地獄の黙示録」の映画評をもっと上手く書ける気がする」


私の顔写真がある機関誌に載って、それもプロのカメラマンが何十枚と撮って、その中から選ばれた笑い顔が思った以上に危ないので私は自分のことが心配になってきた。その生気のない、毎朝水ごりをしてショウタイムとか鏡に向かう自分そのものが如何に尋常ではない日常を繰り返しているか、ある意味そのカメラマンがそれを見抜いたことに脱帽した。コッポラもフォッシーもこういう生活をしてきたのか。

昨夜ホテルに戻ったのは10:30位だったか、そのまま倒れるようにして寝てしまい、今朝は2時にいつものように自分の体を振り絞るかのように、そして自分の寿命を縮めるかのように、そしてそれを実感しながら、今日で死ねばもろともと起き、原稿を仕上げ、まとめて送信して、シャワーを浴び、ワンシンミ駅の始発に乗る。金浦空港には55分で着いて、金浦〜羽田間朝第1便、羽田から大岡山までも丁度55分で、十分12時前に着いた。

本当に死ぬかと思う程疲れている時は、逆に人の話の質がクリアに聴こえたりする。断食をすると、今まで感じなかった匂いと色が非常に鋭く感じられるように、そこの会議でも、意味のない話は非常にクリアで、この旧態依然とした流れに、何も言わずに時間が過ぎる。

今日も1時に寝て、4時に起きる

この無茶苦茶な生活と言うより無理矢理な生活に

いつでも、地雷を踏んだらサヨウナラ、と思う

でも、私が死んだら■■■■■、です

***

志木で降りるはずが森林公園だったり秋津だったりします

私は何が起きても驚かないですし何でも構わないのですが

今日、帰るにしても、一先ず途中で死ななければ良い

朝シャワーを浴びる時に倒れて死ななければ良い

すずかけ台ってどこでしたっけ?

一先ず小竹向原経由で清算ですね

と駅員さんも加担する

***

(拍手、右からスーツ姿でゆったりとした歩調で登場)

皆さん、こんばんわ〜

(その間、お〜来てたの〜、とか驚いた作り顔で観客を指差しながら

 拍手がおさまるのを待って)

・・・巷(ちまた)では

(と抑揚を持って、あらためて)

巷(ちまた)では・・・大統領選挙の話で持ち切りですけど

(観客、一先ず安心)

で・・・

海の向こうでも、毎年秋に首相が交代する国があって・・・

(観客、あ〜)

学生ユニオンのクリスマスパーティの幹事みたいですけどね

(ドラム)

今年のその幹事役の<ピー>首相は、就任早々どこかの大臣が

辞任したらしくて、新<ピー>内閣も、スティーラーズ同様

今シーズンも大変なスタートになったもんですねえ

(観客、笑)

(観客の前にしゃがむADに聞くふり)

えっ?首相の名前が聞こえないって?

あ〜、今日からこの番組では自動音声認識装置をつけたんで

それが早速、作動してるんですね

(もう一度ADに聞きながら)

えっ?それじゃ困るって?

・・・じゃ、ゆっくり

その、新、ア*、*ー内閣も・・・って、まずいでしょ

今度の新大統領にも<ピー>首相って言うように、言っておきます

じゃあ、今夜もLate Tonight、始めましょう

(バンドテーマ曲演奏、拍手、机に戻りつつマグカップでコーヒー、CM)

***

私は、生まれ変わったら

野球選手(大リーグ)

ハードロックギタリスト

そして、スタンダップコメディアン

その3つ目が一番で

そしてレイトショウを任されて、毎晩11時から

ジョディフォスターとか、ルーシーリューとかと

「アリーマイラブに抜擢された時の気持ちは?」

タランティーノ監督はプライベートでもアゴがしゃくれているんですか?」とか、聞くのが夢です。

サタデーナイトライブからでもいいですけど

・・・と言わずと知れた

Tonight Show with Jay Leno (NBC)

Late Show with David Letterman (CBS)

を始めとする数々の番組の話を、かつて長々と書きましたが、コンピュータのクラッシュと共にその名文はどこかに行ってしまいました。

***

昔から、本当のことを言ってはいけないことは分かっていましたが、最近になってようやく、お酒を飲んでも何にも解決にならないことが分かってきました。だからと言って、お酒を飲んでも何にも言いませんけど、お酒を飲まない状態ほど危ないことはなくて、2〜3日もすれば本当のことを言い出しそうで、でも最近はそれをコントロール出来る気がしてきて、でも実のところ、本当のことっていうのは、人それぞれあって、そのどれもが本当のことなので、とやけに謙虚な自分のことが(■が■■のかと)心配になってきた。

私はこの世の中がナパームの匂いで全てが焼き尽くされても、それはそれが運命として驚かないでしょう。勿論、戦争は反対です、と言い訳がましい。

未だに自分の一番の評論は当時の「地獄の黙示録」だと思っていて、その字数制限に何でも盛り込もうとする青臭さ、わざとブチ切れな作為的不完全な映画評が選ばれたことは、私を1週間程喜ばせるには十分でした。

ただ、今となってみると、今の方がもっと刺激的な映画評を書けると思って、コッポラが「地獄の黙示録」を撮りながら狂気の沙汰に陥ることに対して、コッポラの奥さんがカメラを回していたように、そんな、朝のシャワーで、今日も倒れなかった自分を肯定してもらうには、世の女性男性にはコッポラかフォッシーを理解してもらえないと困る、と全てに対して実は私の要求はその辺にあるので、そんじょそこらでは満足しないので、なので、私が死んだら■■■■■、なのです。

つづく


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