宇野亜喜良 インタビュー
1955年にぼくが上京したのは、知り合いの紹介で、恵比寿にあったカルピスの宣伝部に入るためでした。けど、一年近く待たされたかな。この浪人時代、コルゲン・コーワがカエルのシンボルマークのデザインを募集しているのを見つけて、応募したりしていました。それで特選をとったんだけど、もうひとりが和田誠さん。のちに一緒の仕事をするようになるんだから、不思議なものですね。
上京した翌年に売春防止法ができたので、いまのうちに赤線を見ておかないと……と出かけたのが「新宿」との付き合いのはじまりでした。原宿のセントラルアパートに事務所を構えた60年代中ごろには、「ナジャ」に遊びに行ったり、アートシアター新宿文化で寺山修司さん演出の「アダムとイブ―私の犯罪学」の舞台美術を手がけたり……と「新宿」との縁も深くなっていった。
あのころの新宿は混沌として、犯罪都市のようなんだけど、状況が違っても、それぞれがつながって仲間や大家族のようになる……不思議な街でしたね。(談)
宇野亜喜良 (うの・あきら)
1934年、愛知県生まれ。デザイン・イラストレーション・舞台芸術の世界で活躍。著書に『上海異人娼館』(原作・寺山修司)、『美女と野獣』、『エスカルゴの夜明け』(文・蜂飼耳)、(すべてアートン)、『サロメ』(文・蜂飼耳ほか、エクリ)、エッセイ集『薔薇の記憶』(東京書籍)など。
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