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『Webデザイン 知らないと困る現場の新常識100』 こもりまさあき他 (MdNコーポレーション)

Webデザイン 知らないと困る現場の新常識100

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 今、書店に行くと、古い作り方でやってきたWebデザイナーに新しいWeb技術を教える本が山のように積んである。

 古い作り方というのは、枠線を非表示にした見えない表でWebページをまず四角形に仕切り、その四角形の中に文章を流しこんでいくやり方である。凝ったデザインを作るには四角形の中にさらに表を作って小さい四角形に仕切り、画面を細かく分割していく。これを表組レイアウトという。縦方向には若干の自由度があるが、横方向の寸法はピクセル単位でガチガチに固めなければならない。ブラウザには文字の大きさを変える機能がついているが、表組レイアウトではほとんどの場合、レイアウトが崩れないように文字の大きさを決め打ちにしている。

 これに対して新しい作り方では、文章を内容に即してブロックわけし、各ブロックをどのように表示するかをスタイルシートというルールで記述する。スタイルシートは別のファイルとして独立させ、Webページ本体からリンクする形をとることが多いから、同じWebページでも、スタイルシートをとりかえるとレイアウトががらりと変わる。blogをやっている人はさまざまなレイアウトを選べる「スキン」という設定項目を御存知と思うが、「スキン」を変えるというのはリンクするスタイルシートを変えているのである。

 ガチガチに固めた表組レイアウトからスタイルシートへの転換は、マルクス主義統制経済から市場経済への転換に匹敵する思想革命の様相を呈している。わたしはアマチュアなのでギャラリーの位置から楽しんで見ているが、Webデザインを仕事にしている人にとっては新技術への対応は死活問題になっているようである。Webデザイナーのための再教育本がたくさん出版される所以である。

 この方面ではすぐれた本がたくさん出ているようだが、わたしは四人の専門家による『Webデザイン 知らないと困る現場の新常識100』を選んだ。頁をぱらぱらめくったところ、気になる項目がたくさん目にはいってきたからで、他の本ときちんと比較したわけではない。

 本書は一つの話題を見開き二頁で解説するという体裁をとっている。説明は1500字前後で、それに簡単なサンプルコードと、それがどう表示されるかという画面写真がつく。

 通して読んだ時にはずいぶん不親切な本だなと思ったが、サンプルコードを実際に打ちこんでみると、そんなことはないとわかった。打ちこんでいるうちに、なにをやっているかがわかるくらいの、ちょっとしたテクニックを紹介しているのである。

 ちょっとしたテクニックといっても、スタイルシートだけでサブメニューを出す方法とか、リストを横並びに表示する方法、角丸の出し方など、使いでのありそうな話題がとりあげられていて、こんな風にやるのかと実におもしろかった。新しいサイトでも早速使わせてもらった。

 最後の方には見積もりを出す上での注意点とか、お金を払ってもらえない時の対処法とかプロのためのアドバイスが書かれていて、へえーと思った。

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