『高橋留美子傑作短編集〈2〉〈保存版〉る-みっくわ-るど』 高橋留美子 (小学館)
高橋留美子氏の初期短編をまとめた『高橋留美子傑作短編集』の第二巻で1980年から1984年にかけての作品が収められている。冒頭の「炎トリッパー」以外は発表順になっており、シリアスな作品とコミカルな作品をほぼ交互に発表していたことがわかる。
「炎トリッパー」
「少年サンデー」1983年8月増刊号掲載。女子高生が戦国時代にタイムスリップしてしまう話で『犬夜叉』の原型といえるが、最後に『夏への扉』に似た落ちが仕こんである。高橋短編の代表作で、影響を受けたマンガやゲームは数多い。久しぶりに読み直したが、やはり傑作である。
「ザ・超女」
「少年サンデー」1980年10月増刊号掲載。スペース・パトロールの女性隊員が誘拐された宇宙的大富豪の息子を救出にゆく話である。『うる星やつら』のSF面のバリエーションといえるだろう。
「怪猫・明」
「劇画村塾」1981年第4号掲載。劇画村塾は小池一夫氏が主宰した漫画化・漫画原作者の養成講座で、高橋氏はその出身である。劇画村塾の機関誌という内輪向けの媒体に友人から猫をあずかるエピソードを描いた私漫画である。『うる星やつら』でおなじみのO島さんが登場するのがうれしい。
「笑え!ヘルプマン」
「少年サンデー」1981年9月増刊号掲載。ひ弱な主人公が宇宙人のお節介で本物の超能力を身につけてしまう話で、『らんま1/2』につながるアイデアだろう。
「戦国生徒会」
「少年サンデー」1982年2月増刊号掲載。三つの生徒会が内ゲバをくりかえしている高校の話で、平凡な主人公が正統な生徒会長であることを証明する会長印を受けついでしまったことから騒動に巻きこまれる。『うる星やつら』の学園ドラマ面のバリエーションだろう。
「闇をかけるまなざし」
「少年サンデー」1982年8月増刊号掲載。入院中の純真な子供が実は超能力を持っていて、親切にしてくれたヒロインの恋人に嫉妬するというスリラー。名作。
「笑う標的」
「少年サンデー」1983年2月増刊号掲載。幼い頃許婚の約束をした従妹の梓が田舎から出てくる。梓は美しく成長していたが、実は……というスリラーで、アニメにもなっている傑作である。『もののけ姫』のたたり神はもしかしたら本作がヒントになっているかもしれない。梓の妖艶な美しさと激情が印象的だ。
「忘れて眠れ」
「少年サンデー」1984年1月増刊号掲載。現代の高校生に犬使いの霊が憑依するスリラーである。『犬夜叉』のルーツの一つといえるだろう。
「われら顔面仲間」
「少年サンデー」1984年創刊25周年記念増刊号掲載。高校の変装倶楽部のはなしだが、主人公が教頭の息子というのが伏線になっている。スリラーつづきの後の久々のコメディだが、かなり不気味な味つけがなされている。