『日本SF精神史――幕末・明治から戦後まで』長山靖生(河出書房新社)
お待たせいたしました。
河出ブックス創刊第2弾、12月初旬刊行の2点をご紹介いたします。
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まずは、長山靖生さんの『日本SF精神史――幕末・明治から戦後まで』です。
長山さんは、評論家・文筆家。歯科医の傍ら、近代日本の文化史・思想史から、文芸評論や現代社会論まで、幅広く執筆活動を行っていらっしゃいます。
日本のSFの歴史は、なんと幕末までさかのぼることができます。それ以来、〈未来〉はどのように思い描かれ、〈もうひとつの世界〉はいかに空想されてきたのでしょうか。近代日本が培ってきたSF的想像力の系譜を、現在につながる生命あるものとして描く野心作です。
長山さんから読者のみなさんへのメッセージです。
「SFは新しいジャンルだと思われがちですが、日本ではおよそ150年前から、SF小説が書かれていました。未来を夢見ること、仮想現実や仮想技術を通して「リアル」をつかみ取ることは、近代日本の大きな推進力でした。まだSFという概念がなかった頃、「存在しないSF」に人々が込めた精神の軌跡をさぐりたいと思いました。」
目次(章タイトル)は以下のとおりです。
序 章 近代日本SF史――「想像/創造」力再生の試み
第一章 幕末・維新SF事始――日本SFは百五十歳を超えている
第二章 広がる世界、異界への回路
第三章 覇権的カタルシスへの願望――国権小説と架空史小説
第四章 啓蒙と発明のベル・エポック
第五章 新世紀前後――未来戦記と滅亡テーマ
第六章 三大冒険雑誌とその時代
第七章 大正期未来予測とロボットたち
第八章「新青年」時代から戦時下冒険小説へ――海野十三の可能性
第九章 科学小説・空想科学小説からSFへ
あとがき
めくるめく想像力の万華鏡をお楽しみください。
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そして、恒例、
長山靖生の「この〈選書〉がすごい!」
①鹿野政直『大正デモクラシーの底流』(NHKブックス、1973年)
大本教、農村の青年団、そして大衆小説という一見バラバラな民衆の動きを、土俗的な「もうひとつの大正デモクラシー」として捉える視線の確かさに、驚かされました。
明治という時代が持っていた多様な側面を、意外な切り口から鮮やかに照射してみせる手腕に、学生時代の私は魅了されました。
近代日本の性愛空間の歴史を探るという発想の卓越性もさることながら、それを真面目に、実証性と想像力を駆使してまとめあげた姿勢から、多くのことを教えられました。