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プロの読み手による書評ブログ

『自分をいかして生きる』 西村佳哲(basilico)

自分をいかして生きる

→紀伊國屋書店で購入

「自分の仕事を考える3日間」

 あけましておめでとうございます。

 今年は頻繁にブログ更新したいと思いま~す。どうぞよろしくお願いします♪

 1月8日、奈良県立図書館情報館は年明け早々面白いイベントを開催。

今年で3回目。でもこれで最終回だそうだ。

 「「自分の仕事」を考える3日間。」

 光栄なことに今年は私も呼んでいただいた。 300人もの大勢の人が全国から参加して、自分たちも語り感じ、考えた。1、2回と参加して今回も、という常連も少なくない。3日間のフォーラムだから、参加者は同じ宿をとり、まるで合宿のようで、そこここで出会いがあり、情報の交換もあり。豊かで優しい時間が流れていた。

 その人たちが何を期待してきたかは知らない。だが、彼らの真剣なまなざしに射られるようにして、ゲストスピーカーたちは自分の仕事に対する姿勢とか、思いとかを、自由に語った。仕掛け人は西村佳哲さん。「働き方研究家」ということになっているが、多彩な人で、それこそいろいろな「仕事」をなさっている。(西村さんの人となり、それに「仕事」については、ぜひこちらのサイトをご覧になってください。)

 今年も就職難とか言われている。大卒の就職内定率が昨年12月で過去最低の68.8%。終身雇用の時代などとっくに終焉したが、今や社会に一歩踏み出そうとしている若者に働く場がないということなのか。生活保護世帯も過去最高だという。昨日のニュースには、就職できない40代半ばの男性が朝からテレビゲームで時間を潰していた。

 「テレビゲームしていればお金使わないし、時間は潰れるし」

 でも、就職探しはしているのですか?との記者の問いかけには、「一応、こういうもの(情報誌)見て探してはいるんだけれど、月20万は欲しいし正社員じゃないとね。」「そういう求人がないんだよね。」そしてまたテレビゲームに向かう。

 学生も大手企業狙いというから、この就職難の底にあるのは、やりたいことは見えない漠然とした安定志向なのかもしれない。

 だからこそ、「仕事」とはなんだろうと考えないわけにはいかない。人は生きるために働き、働きながら生きていくのだから。

 西村さんも30歳を過ぎた時に会社を辞めて独立した。自分の働き方を学び直すために雑誌の連載という形を借りて、デザイナーやつくり手を訪ね歩いたのが、この「仕事」の発端だったという。そして、取材を通して働き手の成果は狙ったものではなく、結果にすぎないことを学んだ。

 この本には、フォーラムや取材で出会った人々の仕事との出会いのエピソードがちりばめられている。偶然にも素敵な貸家を見つけて閃いて、その場で決断して借りてしまった石村由起子さん。それが今も奈良にある「くるみの木」との出会い。日本の草分け的カフェ・ギャラリーだ。子どもの頃からお店を開きたいというイメージがあって、ある日それにぴったりの家に出会った。偶然のようだが、そうではないようにも思われる。石村さんの頭にあったイメージを実現する場が現れて、そこで<自分の仕事を作っていった>。そして「次第に形になった」。石村さんの話しから、家や人との出会いは偶然ではなく必然であったのだろうと西村さんは考えていく。

 今年のフォーラムの出演者8名のうち、私は自分の出番の前後のおふたり(坂口恭平さんと鈴木昭男さん)の話を聞いたが、やりたいこととやるべきことのあれこれは、すでに彼らの頭の中にイメージとして先にあったようだ。それをいつでも引っ張り出して、具体的な細部まで想像して温めていた。やがて、チャンスが到来したらすぐにでもできるようにしておくのである。それは私もまったく同じで、仕事が仕事として成立する前から、頭の中では何かが少しずつ動いていたし、仕事は形を成す前にすでに始まっていたと思う。

 西村さんの文章を追いかけながら、私は自分の言葉に置き換えて考えていた。自分の仕事とは何か」という問いを通して、自分を見つめる自分がいた。

 この他の著書に『自分の仕事を考える3日間』(弘文堂)、『自分の仕事をつくる』(晶文社ちくま文庫)など多数。

★お知らせ

『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』(弘文堂)刊行記念

西村佳哲×土屋春代(ネパリ・バザーロ)×中村健太(東京仕事百貨)トークセッション

自分の仕事を考える3日間・1年後編

青山ブックセンターのカルチャーサロン青山で。2011年2月15日(火)19:00~21:00(開場18:30~)600円(お問い合わせは青山ブックセンターへ)

→紀伊國屋書店で購入