第1位 『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ
(早川書房/税込1,890円)
読み終えて、書店員としてこの本をどう伝えればいいのだろう、と思った。端正で、後書きにもあるとおり抑制の利いた文章。しかし語られる物語は、なんとも苛烈で、想いに満ちている。主人公の職業「介護人」とは何かは、あえて言うまい。このような職業を、世界を、物語を産み出されては我々にはそれを味わうしかないのではないか。
(朝加昌良・神戸店)
打ちのめされた。ラスト30ページの重さと言ったらない。明かされる残酷な真実。「特別な人間」である主人公たちの悲しみが、まるで自分のもののように胸を襲って、しばし呆然としてしまった。そして考えた。私にとって、この世界にとって、大切なこととは何だろう、と。読み終わった今も、ずっと。本当にこの1冊には、否応なしにそうさせてしまう、すごい力があるのだ。本を閉じてからも物語が続いているような、この余韻はこの本でしか味わえない。
(今井麻夕美・新宿本店)