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第3位 『東京バンドワゴン』 小路幸也

東京バンドワゴン

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集英社/税込1,890円)


堀田家家訓。曰く些事な事件をあなどるなかれ。曰く、文殊の知恵より家族の知恵。ワケあり古本屋一家の舞い込む事件は、ちょっと複雑。けれど、いろんな形のラブに満ちています。この家族がいるかぎり、世はなべてこともなし、そう思えるあったかいお話です。

(酒井和美・本町店)

東京バンドワゴンという名の古本屋を舞台に様々な日常的ミステリーが巻き起こる(どうして百科事典がこんな場所に?)。この小説の語り部はなんと2年前に亡くなったおばあちゃん。空の上から堀田家を見守ります。伝説のロッカー、長男我南人。画家であり未婚の母、長女藍子。我南人の長男の紺は幽霊となったおばあちゃんと話せます。藍子の娘、花陽、紺の息子研人、我南人の愛人の子、青達が食卓を囲みながら繰り広げる探偵騒動には家族を思いやるゆったりとした時間が流れています。とっておきのLOVEがここにはあるんだよぉ。(我南人) 久々に読みおえたくない小説でした。

(百々典孝・本町店)

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