第1位 『サクリファイス』 近藤史恵
(新潮社/税込1,575円)
叫びそうになった。しかし、喉の奥で詰まった。涙が浮かんだ。でも、流れ落ちはしなかった。そんな驚愕とやるせなさ。青空の下、誰のために駆け抜け、何のためにペダルに力を込めるのか。犠牲という存在に、それを乗り越えてゆくということに私たちは何かを感じずにいられない。
〔本町店・酒井和美〕
何が起こったのかわからなかった。ラストに向かう手前、全ての真相、真意がわかった途端に、涙があふれ出た。読み返しながらも、泣きやむことが出来ず、かなりの間、泣いていた。自転車競技に対する知識などないままに読み進め、少しずつ引っかかりを感じながらも、ぐいぐいと読まされた。誰を信じたら良いのか判断できぬまま主人公の動きを追いかけた。人に犠牲を与えてもらっていた彼が犠牲にしたもの、それが何のためになのか。全ての伏線を頭の中でつなげた時の衝撃はいまだ覚めていない。
〔堺北花田店・山口真希子〕
自転車ロードレースの世界で、アシスト達はエースを勝たせるためだけに走る。それはまさしく犠牲。エースもまた、すべてを引き受けて走る。それもまた犠牲。様々な犠牲がある中で、ラスト最大の犠牲が現れる。その真相は、とても重くて苦しくて…。けれど何故か清々しい。前を向いて歩いていこうと思わせてくれる何かがあるのだ。言いたいことは1つだけ。とにかく読んで欲しい。
〔宇都宮店・髙野典子〕