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第4位 『世界屠畜紀行』 内澤旬子

世界屠畜紀行

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解放出版社/税込2,310円)


残酷な内容かと思いきや、現代にも残る部落問題を交えつつ、「食は文化」を再認識させられるユーモラスかつ知的な内容にただただ脱帽。苦手な方もいるかもしれませんが、この本に出会ってから今日もお肉を食べられる事にますます幸せを感じます。あぁ…焼き肉食べたい…。

〔高槻店・岡谷亜希子〕


人類共通の「肉を食べる」という行為。その前には必ず肉を解体する作業が必ず発生する。チェコからトルコ、エジプト、韓国、中国、各国を取材して繊細なイラストを交えながら、肉の解体にかかわる人々の生活や身振りを愛情溢れる表現で描く。動物が肉となる過程を、決して残酷なものとしてではなく、汚い行為ではもちろんなく、生活の一環としてあたたかい眼差しで記述していく。日本ではブラックボックス化されているので日本社会を対象化する意味でも、類書なく興味深い1冊。国によって社会的位置づけが全く違うことにも驚く。

〔札幌本店・大田光穂〕

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