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第3位 『川の光』 松浦寿輝

川の光

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中央公論新社/税込1,785円)


ちっぽけなちっぽけなネズミ3匹。その3匹が安住の地を求めてさまざまな困難を乗り越えてゆく物語。その塵のような生命を通して、視点はぐーっと広がり果てのない宇宙へと移っていきます。ふと見上げた空の青さ、風のにおい。その一瞬こそは途方もない奇蹟なのです。

クレド岡山店・浜本典子〕


安住の地を求めるネズミ一家の冒険譚。ハラハラドキドキ、ページをめくる手が止まらず、最後には思わずほろりときました。ネズミのタータをはじめとする小さな生き物たちが、こんなにも生きることに懸命になっている。川の流れのように壮大な生命の営みの中では、彼らの存在は川面に映る光の一粒でしかないのかもしれない。でも、そのささやかなきらめきがあるからこそ、川は美しいのだと思いました。子供から大人まで手に取っていただきたい、心に暖かな光がやどる物語です。

〔新宿本店・今井麻夕美〕

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