『後手という生き方-「先手」にはない夢を実現する力』瀬川昌司(角川書店)
「情熱を燃やし続けて」
必ずしも、「先手必勝」ではないらしい・・・
先日、webニュースを見ていたらこのような報道があった。
将棋のプロ公式戦で08年度の先手勝率が、
日本将棋連盟が統計を取り始めた1967年度以降、初めて5割を切ったという。
羽生さんのコメントがのっていた。
「大きな理由は後手の作戦の幅が広がったこと。
先手が主導権を取りやすいのは変わらないが、
的を絞りにくくなった。
後手側のいろんな創意工夫が実を結んだということでしょうか」
後手でせめていくドラマを、感じた。
自らを後手番の人生だという、瀬川さんの本をみつけて読んでみた。
瀬川さんはサラリーマンから(アマチュアを経て)35歳でプロ棋士となった。
彼の言葉はとてつもなく重く、
プロとはどういうものか、と徹底的に綴ってある。
さびしさを知ることは強さ
願わなければ叶わない
プロは諦めが悪い
トッププロにはギャンブルは通用しない
漠然としたイメージでは思いは届かない
ひとつひとつ、いちいち胸を打つ。
年齢制限にもひっかかり、プロへの道が閉ざされた彼に、
アマチュア成績をもとに嘆願書がだされて、門戸がひらかれた。
まさに奇跡のような出来事で、彼はプロになった。
しかし、それは彼の実力であり、努力であり、あきらめない姿勢の結果。
周りから自分だけ遅れていくといった不安の感覚は、
いくつになっても、誰にだってあるものだ。
こんなことしていていいのだろうか、と焦る気持ち。
努力が一向に結果に結びつかない、いらだち。
そんな、後手にまわってしまったときの心の持ちようを
見事に切り替え、形勢逆転に持ち込める、この強さ。
やさぐれていたら、めぐってこないチャンスだ。
巻末の渡辺明さんとの対談で、
彼はプロであり続ける、という表現をしていた。
プロになった、という結果ではなく、
今、この瞬間にも、プロであり続けているか?と
自らに問うている。
それに対して渡辺さんも
「プロとは情熱を燃やし続ける存在である」と返している。
情熱を燃やし続けていくこと
後手という生き方の、執念。