ジンピク売上ランキング結果発表!
皆様ご無沙汰しております。ピクウィッククラブです。
前回のフェア、ジンピクの終了から約一ヶ月。ようやく売上ランキングが完成いたしました。
お待たせしてしまい申し訳ありません。これもひとえに売上集計が手間取るくらい多くのお客様にご来店いただいた証明です。これに勝る嬉しい悲鳴はありません。重ね重ね、ご支援・ご来店をありがとうございました。
それではさっそく、順位の発表です。
《個別総合ランキング》
*書籍毎の売り上げ数で判定*
同率2位 カルヴィーノ『見えない都市』河出文庫
4位 ヴィクトル・フランクル『夜と霧』みすず書房 (村上春樹枠キーワード“第二次世界大戦”)
5位 カフカ『城』新潮文庫
6位 佐野真一『甘粕正彦乱心の曠野』新潮文庫(村上春樹枠キーワード“第二次世界大戦”)
7位 井上ひさし『吉里吉里人 上』新潮社 『中』 『下』(宮沢賢治枠キーワード“東北における民俗学”)
8位 赤坂憲雄『東北学/忘れられた東北』講談社文庫(宮沢賢治枠キーワード“東北における民俗学”)
9位 ロラン・バルト『表徴の帝国』ちくま学芸文庫(ボルヘス枠キーワード“最小の物語へ”)
10位 ボルヘス『創造者』岩波文庫
是非前半の売り上げ結果と照らし合わせてみてください。ボルヘスが前半トップの多和田葉子を逆転して堂々の1位です。さらに前半振るわなかったカルヴィーノが同率2位につけるという大躍進ぶりです。
トップ10後半にはテーマ選書の活躍も目立ちます。時勢を反映してか、第二次大戦や東北への関心が強く感じられるのは、人文書売り場らしい結果ではないでしょうか。
《作家枠ランキング》
*著作とキーワード選書を合わせた売り上げ数で判定*
*総合ランキングにあるもの以外で動きの良かった書籍を掲載*
1位 ホルヘ・ルイス・ボルヘス
~活躍した書籍~
『合本俳句歳時記』角川学芸出版 キーワード“最小の物語へ”
木村敏『時間と自己』中公新書 キーワード“夢と永遠”
2位 阿部和重
~活躍した書籍~
伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド-ひらかれたマンガ表現論へ』NTT出版 キーワード“少女とキャラクター”
中原昌也『死んでも何も残さない』新潮社 キーワード“「映画」としての世界”
3位 多和田葉子
~活躍した書籍~
今井むつみ『ことばと思考』岩波新書 キーワード“翻訳される身体”
4位 フランツ・カフカ
~活躍した書籍~
ベイトソン『精神と自然』新思索社 キーワード“虫の生活”
5位 宮沢賢治
~活躍した書籍~
菅原千恵子『宮沢賢治の青春 “ただ一人の友”保阪嘉内をめぐって』角川文庫 評論枠
6位 倉橋由美子
~活躍した書籍~
ネルソン・グッドマン『世界制作の方法』ちくま学芸文庫 キーワード“虚構への旅”
7位 村上春樹
加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』朝日出版社 キーワード“第二次世界大戦”
キルケゴール『死に至る病』岩波文庫 キーワード“喪失の先”
8位 J.G.バラード
~活躍した書籍~
仲正昌樹『ヴァルター・ベンヤミン-「危機」の時代の思想家を読む』作品社 キーワード“メディア化する世界”
9位 イタロ・カルヴィーノ
~活躍した書籍~
カルヴィーノ『アメリカ講義-新たな千年紀のための六つのメモ』岩波文庫
ジョスリン・ゴドウィン『キルヒャーの世界図鑑』工作舎 キーワード“ウェルメイド宇宙”
10位 アントン・チェーホフ
~活躍した書籍~
フルッサー『デザインの小さな哲学』鹿島出版会 キーワード“作法のメタモルフォーゼ”
11位 オスカー・ワイルド
~活躍した書籍~
中野香織『ダンディズムの系譜』新潮選書 キーワード“ダンディズム”
12位 J.M.クッツェー
~活躍した書籍~
作家枠となると個別ランキングとはガラリと異なる様相を呈しています。2位にはなんと阿部和重枠が。前半も確かに高順位につけていたとはいえ、ここまでは予想外でした。
カフカが安定して高順位をキープ。ここには多すぎて載せられない1,2冊単位で売れた書籍が多かったようです。
逆に春樹やバラードは、作家の著作よりもキーワード選書からの売り上げが目立ちました。著作は既にみなさんお持ちの可能性が高いのではと思います。
個別ランキングでは上位につけていたカルヴィーノも、その他の書籍の売り上げが伸びきらず、作家枠では低迷しています。
こういった違いが表れてなかなか面白い順位になったのではないでしょうか。
《文学案内ランキング》
*作家著作、キーワード選書とは別枠で設けた文学案内枠の売り上げ順位を公表*
1位 デイヴィッド・ダムロッシュ『世界文学とは何か?』国書刊行会
今回は前半のランキングでは総合枠でカウントしていた文学案内関連のランキングを別途付け足してみました。デイヴィッド・ロッジが3位につけているのが印象的ですね。
終わってみれば、やはりボルヘスは強かった、といったところでしょうか。そういえば先日生誕112周年を迎え、googleのロゴが登場したりしていました。そんな汲めども尽きぬボルヘスの文学的偉業について簡潔に書かれた文章がありましたので、引用します。
“私たちが現に立ち会うことができた文学的ジャンルの最後の一大発明は、短章的作品の名人、ホルヘ・ルイス・ボルヘスによって行われたものですが、それは語り手としてのみずからを発見するというわけでした。つまり、四十歳近くに至るまで、エッセーふうな散文から物語的な散文に移ることを許さなかった障害を、それによって乗り越えることが可能になったコロンブスの卵というわけでした。ボルヘスの考案は、自分が書こうとする書物が実は、既に書かれてしまった、他人によって書かれているのだと想定することだったのです、すなわち未知の仮定的な作者、他国語の、別の文化に属する著者によって。” イタロ・カルヴィーノ『アメリカ講義-新たな千年紀のための六つのメモ』(岩波文庫)より
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