『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス(早川書房)
アルジャーノンに花束を
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1.この本との出会いはいつですか?
初めて読んだのは高校生の頃。改めて読み直したのは大学生になってからです。
2.どんな内容の本ですか?
知恵遅れの心優しい主人公が、脳外科的手術によってIQ180以上の天才に変貌してしまう。
アルジャーノンとは動物実験に使われたネズミで、主人公は自分とアルジャーノンを重ね合わせながら、自己認識の変化、周囲の人間の対応の変化に苦悩していく。
3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)
印象に残る主人公の台詞があります。
「知能は人間に与えられた最高の資質のひとつですよ。しかし知識を求める心が、愛情を求める心を排除してしまうことがあまりにも多いんです。これはごく最近ぼくがひとりで発見したんですがね。これをひとつの仮説として示しましょう。すなわち、愛情を与えたり受け入れたりする能力がなければ、知能というものは精神的道徳的な崩壊をもたらし、神経症ないしは精神病すらひきおこすものである。つまりですねぇ、自己中心的な目的でそれ自体に吸収されて、それ自体に関与するだけの心、人間関係の排除へと向かう心というものは、暴力と苦痛にしかつながらないということ………略………あーたら、どうしておれをそんなふうに見るの?おれ、何かまちがったこと言った?悪いこと言った?正しくないことは言わねーつもりだけど。ぼく、いつだって正しいことをしようとしたんだ。お母さんはいつもいってた、人には親切にしなさい、そうすれば、もめごとなんかにまきこまれなくてもすむし、お友だちもたくさんできるって」
主人公チャーリーは、心優しい人間ですが、急激な知能増進に戸惑い、様々な問題に直面します。
分裂した自分を感じる中で彼自身が見つけた答えがこの台詞に凝縮されていると思います。
天才となったチャーリーは最後まで母親の愛情を求め続けます。
しかし、……………
誰もがもっている心の中の暗い一面や暖かい一面、それら全てをチャーリーは背負って苦悩してくれています。我々の代わりに。
チャーリーの気持ちを思うと涙を禁じ得ません。
4.この本からどのような影響を受けましたか?
チャーリー自身からも自分自身の在り方について示唆を受けますが、周囲の登場人物からも大いに影響を受けました。
なぜなら我々自身はチャーリーではなく、周囲の一般人にほかならないからです。
彼らからは、チャーリーという特殊な目線を通した自分自身、普段と異なった角度から見える自分自身というものを深く考えさせられます。
例えば、街中で知恵遅れの人々を見た時、自分たちは何を考えてしまっているのかということ等。
様々な方向から、自分自身とは……と考えさせられる名著です。