書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2007-01-01から1年間の記事一覧

第4位 『世界屠畜紀行』 内澤旬子

→紀伊國屋書店で購入 (解放出版社/税込2,310円) 残酷な内容かと思いきや、現代にも残る部落問題を交えつつ、「食は文化」を再認識させられるユーモラスかつ知的な内容にただただ脱帽。苦手な方もいるかもしれませんが、この本に出会ってから今日もお肉を…

第5位 『給食番長』 よしながこうたく

→紀伊國屋書店で購入 (長崎出版/税込1,575円) 「つくってものこすからもうつくりません。おばちゃんたちはいえでします。さがさないでください」腕白小学生達は、この一大事にどう立ち向かうのか?給食のおばちゃんたちの本当の気持ちはみんなに伝わるの…

第6位 『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込777円) 今年また面白い新書と出逢えた!巧みで美しい文章はスリルと刺激に満ち溢れ、さながらミステリーを読んでいるかのよう。クリックとワトソンという20世紀最大の発見に隠された疑惑、DNA解読の神秘…ジグソーパズル…

第7位 『怖い絵』 中野京子

→紀伊國屋書店で購入 (朝日出版社/税込1,890円) 絵画は癒し。とんでもない。世の中にはまるで悪夢を見るかのような「怖い絵」がある。血しぶきをあげ首を切られる男、狂気の果てに我が子を食らう父親、そして、今まさに断頭台に送られるマリー・アントワ…

第8位 『国のない男』 カート・ヴォネガット

→紀伊國屋書店で購入 (日本放送出版協会/税込1,680円) 「愛は滅びるが親切は勝つ」世界を救うのは愛ではなくて親切なんだと気づかせてくれたヴォネガット。そのヴォネガットの最後の1冊。こんなにウロコをはりつけて…とあきれるくらい目からウロコがポロ…

第9位 『先生とわたし』 四方田犬彦

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,575円) 「師弟」とは一体何なのか…衝撃的なラストにしばし呆然としてしまう。前半はまさに「理想の師弟関係」が描かれているものの随所に不穏なる気配も漂わせ、ストーリーに引き込ませる手法がまた上手い。評伝であり…

第10位 『ピクトさんの本』 内海慶一

→紀伊國屋書店で購入 (BNN新社/税込1,050円) タイトルを聞いて「誰だろうそれ」写真/図を見て「あぁ~見たことある」(でも何でピクトさん?)パラパラと本を見て「へー色々居るんだなぁ」じっくり読んで「…ピクトさん…!!」じわじわくるテンポの良い文…

第11位 『17歳のための世界と日本の見方』 松岡正剛

→紀伊國屋書店で購入 (春秋社/税込1,785円) 世界の宗教、哲学、芸術、歴史を縦横無尽に語る。世に無数の本あれど、ゾロアスター教から「たらこスパゲッティ」まで一冊でフォローするのはこの本のみ(なぜ「たらこスパゲッティ」なのかは読んでからのお楽…

第12位 『なぜ社員はやる気をなくしているのか』 柴田昌治

→紀伊國屋書店で購入 (日本経済新聞社/税込1,575円) 部下を持つ人は一読を!かつての「リーダーシップ」では部下は動かなくなっている。今、求められているのは「スポンサーシップ」による質の高いチームワーク作りである。社員の内発的動機をいかに引き…

第13位 『鹿男あをによし』 万城目学

→紀伊國屋書店で購入 (幻冬舎/税込1,575円) ご存じ「鴨川ホルモー」著者の万城目学第2作目。あの「ホルモー」の衝撃を超えられるか、という心配はいりません。少々荒削りな部分を持ちながらも、実に緻密に組み立てられたストーリー展開…参りました。「奈…

第14位 『男子』 梅佳代

→紀伊國屋書店で購入 (リトル・モア/税込1,995円) これぞ男子!これぞ小学生!女子からの目線で撮られたわんぱくざかりの男の子たちのオンパレードです。こんな子達がずっとずっと20年も30年後もいてくれることを切に願います。 〔札幌本店・伊藤麻純〕 →…

第15位 『映画篇』 金城一紀

→紀伊國屋書店で購入 (集英社/税込1,470円) 映画を見る。この無上の喜び。これは5本の映画をモチーフに描かれた5つの物語。けれど単なる短編集ではありません。映画を通してつながった魅力的な登場人物たちは、それぞれの生き方で、物語を愛する強さと勇…

第15位 『武士道シックスティーン』 誉田哲也

→紀伊國屋書店で購入 (文藝春秋/税込1,476円) 剣道に対する気持ちも勝利への執念、経験などあらゆる点が正反対の2人。同じチームになって、ぶつかり合うなかで互いの本心を知りわかり合ってゆく過程がとても丁寧に書かれている。正解などないがゆえにすれ…

第17位 『インシテミル』 米澤穂信

→紀伊國屋書店で購入 (文藝春秋/税込1,680円) 求人誌の誤植?時給11万2千円?軽い気持ちで応募した7日間のアルバイトの内容は…(注)以下は読まないで下さい。本格好きには堪らない、参加者が一人ずつ死を迎える密室ミステリー。 初めから謎を解いたつも…

第18位 『おひとりさまの老後』 上野千鶴子

→紀伊國屋書店で購入 (法研/税込1,470円) 今現在まさに「おひとりさま」の方や、これから「おひとりさま」の方だけでなく、若い世代にも読める本です。私はこれを読んで、「おひとりさま」になった祖母の気持ちが少し見えた気がしました。そしてそんな私…

第19位 『しずく』 西加奈子

→紀伊國屋書店で購入 (光文社/税込1,365円) 胸にしんしんと、ひたひたと入ってくる小説です。言葉の1つ1つが丁寧で、心の奥まで沁み込みます。短編集なのにそれを感じさせない、充分な満足感。秀逸です。実はこの作品、テーマは女2人。全ての設定が全く違…

第20位 『ねにもつタイプ』 岸本佐知子

→紀伊國屋書店で購入 (筑摩書房/税込1,575円) これがエッセイだとするならば、岸本さんはちょっと位相のズレた世界に住んでいるに違いない。妄想にみちた文章をくすくす笑いながら読んでいくと、あっという間に見たことのない世界に引きずり込まれます。…

第21位 『あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します』 立花実枝子

→紀伊國屋書店で購入 (新書館/税込840円) ホントにこんなお店があるの?!巷にはたくさんのグルメエッセイが溢れてますが、この本は違うんです。あえて「死んでる店」を探してます。深まる絆!!めばえる殺意!!その体当たりぶりと著者の怒りのコメント…

第22位 『星新一一〇〇一話をつくった人』 最相葉月

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込2,415円) “星さんゆくよ!”と、リニアモーターカーのシートに座り、私の膝の上に置いた《この本》に語りかけました。星さんだったら必ず近未来への実験線に乗車されただろうとの思いからです。著者、最相さんへも敬意を…

第23位 『ホームレス中学生』 田村裕

→紀伊國屋書店で購入 (ワニブックス/税込1,365円) 「飽食の時代」といわれる現代に生きる若者たちに読んでもらいたい。現代日本のサクセスストーリーは「お笑い」にあることを知ってもらいたい。麒麟の「ナレーションネタ」でイジられた後の彼のツッコミ…

第24位 『有頂天家族』 森見登美彦

→紀伊國屋書店で購入 (幻冬舎/税込1,575円) このレトロモダンとでも言うべき摩訶不思議な世界に、一度足を踏み入れてしまえば、病みつきになること必至。それはもう、幻の名酒と名高い電気ブランの如く。(注:この文章の作者は下戸であります)狸と天狗…

第25位 『獣の奏者1』 上橋菜穂子

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込1,575円) 「ジブリより壮大で、ハリポタより息をのむ!」人類と自然、民族と信条。ファンタジーの夢の世界の中にいろいろなテーマが織り込まれている。日本にもこんなファンタジーがあったなんて…。ファンタジーを敬遠し…

第25位 『神は妄想である』 リチャード・ドーキンス

→紀伊國屋書店で購入 (早川書房/税込2,625円) なぜ紀伊國屋書店刊でないのか、非常に残念!!あの「利己的な遺伝子」のドーキンスが、宗教全般を徹底的に弾劾します。神が存在しないこと、道徳は宗教に必ずしも結びつかないこと、そして宗教一般というも…

第25位 『頭のうちどころが悪かった熊の話』 安東みきえ

→紀伊國屋書店で購入 (理論社/税込1,575円) 動物たちを主人公にしたほのぼのストーリーかと思いきや、シュールでシニカルな笑いを含みつつ人生について考えてしまう。夕暮れ時移動のバスの中で読みましたが寂しい気持ちがだんだんと満たされていくような…

第28位 『街場の中国論』 内田樹

→紀伊國屋書店で購入 (ミシマ社/税込1,680円) こんなに面白く、画期的な、そして常識的な中国論は初めて!!歴史も社会情勢も何となく知っている人も中国のことならお任せという人も誰でもが唸る一冊!!内田樹氏らしい街場のふつうの人の目線から推論し…

第29位 『ぼくには数字が風景に見える』 ダニエル・タメット

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込1,785円) 数字と語学の天才なのはサヴァン症候群と自閉症がゆえなのか…?ダニエルの頭の中では数式が美しい風景に感じる(ちょっと羨ましい)そんな彼は人を愛する事、愛される事の大切さを知っている。私はこの本に「愛…

第30位 『とりつくしま』 東直子

→紀伊國屋書店で購入 (筑摩書房/税込1,470円) 生きている時の、愛の形はたくさんある。じゃあ、死後に草葉の陰から「見てるだけ」という制限つきだったら?やっぱり、たくさんある。愛する人の生涯を、見届けたい?見ていられない?新しい幸せを掴んでほ…

『時代の目撃者-資料としての視覚イメージを利用した歴史研究』 ピーター・バーク[著] 諸川春樹[訳] (中央公論美術出版)

→紀伊國屋書店で購入 「視覚イメージの歴史人類学」にようやっと糸口 なにかと話題多い映画監督のピーター・グリーナウェイだが、その最新作『レンブラントの夜警』でもって2008年、「文化史」をめぐる動きは賑々しく始まることだろう。名画『夜警』に加えら…

『残光』小島信夫(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「小島信夫を読むためのコツ」 昨年91歳で亡くなった小島信夫の最後の作品である。はっきり言ってものすごく小島信夫度が高い。濃い。「小島初体験!」という人は『うるわしき日々』とか『抱擁家族』あたりからはじめる方が安全だろう…

『母よ!殺すな』 横塚晃一[著]、立岩真也[解説] (生活書院)

→紀伊國屋書店で購入 「今一度、「愛と正義を否定する」」 「青い芝」と聞いて震え上がる人を何人も知っている。そのうちのひとりKさんは何でも若かった時に彼らの介助を買って出たが、かえってさんざん叱られて、それで障害者を見るのもいやになってしまっ…