書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2009-11-27から1日間の記事一覧

『思い出を切りぬくとき』萩尾望都(河出文庫)

→紀伊國屋書店で購入 今年六十になる友人知人を思い浮かべてみる。彼らについていちどは、この人は萩尾望都と同い年、と思ったものである。自分がまだ二十代の頃は、二十一年長の人はとてつもなく大人にみえたもので、その頃から萩尾望都は私のなかではこの…

『国字の位相と展開』 笹原宏之 (三省堂)

→紀伊國屋書店で購入 ソシュールが文字を研究対象からはずすと宣言したことに代表されるように、言語学では文字はまま子あつかいされてきた。欧米の言語学の移入からはじまった日本の国語学(最近は「日本語学」と呼ぶようであるが)もそうである。 言語とは…

『にっぽん劇場』『何かへの旅』森山大道(月曜社)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「森山大道はこうして出来上がった」 いま書店の写真コーナーには森山大道のたくさんの写真集が売られている。大判のものからペーパーバックまで、サイズも厚みも装丁もさまざまな写真集がところ狭しと置かれており…

第23位『つみきのいえ』加藤久仁生【絵】 平田研也【文】

→紀伊國屋書店で購入 (白泉社/1,470円) 海の高さが高くなるごとにつみきのように重ねた家にすむおじいさん。おばあさんとの思い出を取りもどすため、沈んだ部分にもぐります。あたたかい色調に愛がつまったストーリーです。フランス・アヌシー国際アニメ…

第24位『夜想曲集』カズオ・イシグロ

→紀伊國屋書店で購入 (早川書房/1,680円) ひとりきりの静かな夜、お気に入りのソファに座り、薄暗い灯の下、ゆったりとしたジャズをBGMに読むなら、この本しかないでしょう!! 登場人物に感情移入し、現実逃避できること請け合いです。 〔浦和パルコ…

第25位『動的平衡』福岡伸一

→紀伊國屋書店で購入 (木楽舎/1,600円) 「生命」とは何だろうか、「生きる」というのは一体どのようなことなのだろうか。人間に限らず、地球上の全生物は何万という細胞から成り立っており、細胞は決して単独で存在することはできない。何故か。細胞は相…

『質的データの2次分析――イギリスの格差拡大プロセスの分析視角――』武田尚子(ハーベスト社)

→紀伊國屋書店で購入 「2次分析を通してみえる魅力的な世界」 社会学の(おそらく他の学問分野でも)質的研究においては、自分自身でデータを<もぎとってくる>ことの大切さが、しばしば言われます。実際、苦労してフィールドノーツを書き溜めたり、インタ…