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『ブ活はじめます―すべての女に捧げる「気持ちいい!」ブス活動のススメ』安彦麻理絵(宝島社)

ブ活はじめます―すべての女に捧げる「気持ちいい!」ブス活動のススメ

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「女性たちがすべてをさらけ出す・・・それがブ活(ブス活動)」

「実はどんな女の中にも「ブス」はいる。
 世の中の、あらゆる女が、自分の中に「ブスを飼っている」のだ。」(P16)

 衝撃的だが、でもどことなく納得のいく指摘であろう。「ブス」が何であるか、簡潔に定義づけられはしないものの、「おおむねこういうものだろう」という指摘がつらつらと書かれた第一章「女とブス」から本書は始まる。そして、さらにこうも書かれている。

「女にとっての「ブス」にあたるものが、男には、ない。」(P19)

 これもまた、(評者は男ではあるものの)納得のいく指摘である。たぶん、それの裏返しで「美人」にあたる概念も男性には存在しないのだ。

 わかりやすいのは化粧だろう。それをする男性がまったくいないわけではない。だが女性が化粧によって、かなりの程度「美人」を装うことができるのに対し、男性たちにとってそれにあたるものはなかなかなさそうだ。

 それは、やや乱暴に図式化すれば、「素をさらけ出すこと」という要素が「男らしさ」には含まれているのに対して、どこか「装うもの」という要素が「女らしさ」には含まれているからなのかもしれない。

 そうした社会的に期待される「女らしさ」の装いを、開き直って脱ぎ去る行為こそ、本書の言う「ブス活動」に他ならないのである。

「なぜなら、多少の開き直りは、女を「楽」にしてくれるからだ。

 ずうっと、重荷のように背負ってきた何かが、歳を重ねるとともに気にならなくなったり、「憑き物が落ちた」かのような感覚を味わったり、今まで嫌いだった自分を受け入れてみよう、なんて思えたりするのは、すべて、開き直りがいい方向にいった例である。」(P21)

 そして、上記のようにこの「開き直り」を肯定したうえで、それは年配の「オバさん」だけに見られるものだけではなく、全ての女性に見られるもの、あるいは全ての女性が身につけたほうがよいものなのだと説く。

 だからこそ「あらゆる女が、自分の中に「ブスを飼っている」」ことになるのだ。

 本書では、そうした「ブス活動」の例として、ブスメシ、ブス友・ブス会、ブス本・ブス漫画、ブス育児・ブスママなどが取り上げられている。

  なかでも評者が、特に目を引いたのは、やはり「ブス友・ブス会」である。

「ブス会のキモ・・・それはいかにどこまで女同士で腹を割りあえるか」(P82)

「「ブス友」とは 「ブストーク」や「ブス遊び」を一緒に楽しめてお互いブスをさらけ出し合える友人のことである」(P83)

 具体的にどんな「腹の割りあい」や「さらけ出し合い」がなされるかは本書をお読みいただきたいが、「装い」を解かないままに集った「女子会」が見栄の張り合いに堕していくであろうことが想像されるのと比べて、こうした「ブス友」が繰り広げる「ブス会」は、一見、目をそむけたくなるほどの衝撃を持ち合わせながらも、でも抗いがたい楽しさや気持ちよさを持っているのがよくわかる。

 たしかに、ネーミングはともかくとしても、本当に女性が救われるのは「女子会」よりも、「ブス会」であり「ブ活」なのだろうと納得させられる内容である。

 なかなか、自分をさらけ出せずに悩んでいる女性たちに、そして女性たちの文化を学ぶべき男性たちに、広く読んでほしい一冊である。


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