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『Succubus Blues』Richelle Mead(Zebra Books)

Succubus Blues

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「ハードなセックスシーンもあるパラノーマル・ロマンス」


 バンパイアやデーモンなど超現実世界の住人たちと人間の世界を舞台にした恋愛小説は、アメリカでは人気があり、最近では多くの作品が映画になっている。

 今回紹介するのは、そんなパラノーマル・ロマンスの作品のなかでも人気が高いジョジーナ・キンケードシリーズの第一弾「Succubus Blues」。著者はリシェル・ミード。

 サキュバスとは「夢魔」などと訳されるが、この作品の中ではインプ(小鬼)と組んで男を虜にし、魂を悪魔に売り渡させる役目の女性。

 シアトルに住むジョジーナは、この地域でただひとりのサキュバスだ。彼女はサキュバスの持つ力によって自由に姿形を変えられ、服装も変えることができる。男の魂を虜にする方法はセックスを用いるため、彼女は綺麗でセックスアピールいっぱいだ。

 サキュバスの仕事をするとき以外は、彼女はシアトルの書店で店員として働いている。

 その書店に新刊のプロモーションのためにやってくるのが作家のセス。セスはジョジーナがセックススレーブになってもいいとまで思っている大好きな作家だ。

 彼女はまた書店の客だったローマンとも知り合い、彼に惹かれていく。

 そんな時にバンパイアのデュアンが何者かに殺され、シアトル地区のパラノーマル界に衝撃が走る。ジョジーナのボスでシアトル地区を統括するデーモンのジェロームは「バンパイヤ・ハンター」の仕業だという。

 しかし、次にインプ(小鬼)のヒューが襲われ、バンパイアだけを狙う者ではない何か他の力が働いているとジョジーナは考える。

 ジョジーナの元には謎の伝言が残され、彼女は何が起こっているかを自分で調べ始める。

 これと同時進行で、彼女のセックスフレンドのウォレン、セス、ローマンとの関係が発展していく。自分とのセックスは相手の命を奪っていくことになるため、本当に好きな人間とのセックスは避けなければならない。しかし、サキュバスとしての欲望があり男の欲望の強さも感じ取ることができる。

 「Another kiss…another kiss, and I would not be able to stop.I wanted it too much….”Please,”I begged, my voice a whisper,”let me go. Please let me go. You have to let me go.”(次のキス・・・次のキス、そうして自分を抑えられなくなる。欲しくてたまらない・・・。『お願い』私の擦れ声がせがむ。『離して、お願い離して、私を離して』)」

 天使、デーモン、バンパイア、インプなどが徘徊する世界とシアトルの街が重なり、セックスが介在するロマンス物語が楽しめる、エンターテインメント性の高い作品だ。


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