書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『まんがで読破 若きウェルテルの悩み』ゲーテ(イースト・プレス)

→紀伊國屋書店で購入 ゲーテといえばドイツの古典文学のなかでもひときわ大きくそびえたつ、大きな山のような存在だ。まさに「歴史に残る文豪」のひとりに違いないが、昨今の本離れ著しい若い世代の人たちにとっては、いささか縁遠い存在だろう。 その昔、テ…

人文書宣言×ピクウィック合同フェア(通称ジンピク) 第1週経過!

こんにちは。毎度フェアのご来場&ブログをご覧下さりありがとうございます。 6/1より突貫工事ではじまりました人文書宣言×ピクウィック合同フェア『小説と思考の繋留――〝気づき〟の先を想像する』も一週間を経過、ということで今回はよりざっくりとフェアの…

『マイ・バック・ページ ある60年代の物語』川本三郎(平凡社)

→紀伊國屋書店で購入 「<劇評家の作業日誌>(56)」 この本の初版は1988年、河出書房新社から刊行された。それが昨秋、22年ぶりに新装版で再刊された。復刊のきっかけは、この5月に公開された映画(山下敦弘=監督)である。妻夫木聡と松山ケンイ…

『接続された歴史-インドとヨーロッパ』S・スブラフマニヤム著、三田昌彦・太田信宏訳(名古屋大学出版会)

→紀伊國屋書店で購入 本書は、決して読みやすい本ではない。それをここまで日本人読者のために翻訳し、訳注を付し、「訳者あとがき」を書いてくれたふたりの訳者に、まず感謝したい。 本書は、「第1章 序論」を含む7章と短い「終章」からなる。それぞれの章…

『猫とあほんだら』町田 康(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 『猫にかまけて』(2004/11) 『猫のあしあと』(2007/10)) に続く、著者と猫達との暮らしを描いたエッセイ、待望の三作目。 今回は著者が東京から伊豆半島へ引っ越す。 新居を探すうち、たまたま捨て猫を発見する。 引越し先を探す旅…

『Chelsea Horror Hotel』Dee Dee Ramone(Da Capo Press)

→紀伊國屋書店で購入 「ニューヨークのパンク魂溢れる物語」 ニューヨークのパンク・バンド、ラモーンズのボーカルだったジョーイ・ラモーンは2001年4月に49歳で死んだ。僕は、ニューヨークのイーストビレッジにあるマクドナルドで一度ジョーイをみか…

人文書宣言×ピクウィック・クラブ合同フェア、開催中

お待たせしました。 2011年ピクウィック・クラブのフェア第3弾は、5階人文書売場におじゃましています。人文書売場の定期企画「今こそ!人文書宣言」との合体フェアです。 はじまってます。 お陰様で「文学博覧会2011」は大好評のうちに幕を閉じました。あり…

『うつろ舟 ─ブラジル日本人作家・松井太郎小説選』松井太郎(松籟社)

→紀伊國屋書店で購入 「どこか投げやりで、潔い人々」 不思議な小説集だった。 日系ブラジル移民の作品集。一人の移民の苦労を描いた自伝的な作品だろう、なんてことを予想しながら読み始めたのだが、実際にはまったく違った。本書には表題作である中編小説…

『倍音』中村明一(春秋社)

→紀伊國屋書店で購入 「〝こんばんは、森進一です〟の謎」 書評空間で今井顕氏が取り上げておられるのを見て、目をつけた本である。期待に違わずあやしい領域に踏みこんだ、楽しい本であった。 まず誰もが気になるのは、「倍音」という聞き慣れない言葉だろ…