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プロの読み手による書評ブログ

2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『小説の方法 ポストモダン文学講義』真鍋正宏(萌書房)

→紀伊國屋書店で購入 「読んで楽しい文学理論書」 文学の理論書というと、堅くて、難しいことが書いてあって、睡眠導入剤にはうってつけだが(失礼!)一般の読者が読んでも面白くないと思われがちである。高校生に文学を教えている手前、そのような本も結構…

『かんさい絵ことば辞典』ニシワキタダシ/コラム・早川卓馬(ピエ・ブックス)

→紀伊國屋書店で購入 京都から東京へ移ったばかりのころ、街中で耳に入ってくるのが関西弁でないのが、なんとも居心地わるかった。 関東に生まれ育った私は関西弁を話せないが、十何年の関西暮らしで耳は完全に関西仕様になっていたのだ。たまに帰省したとき…

『ミステリーの書き方』日本推理作家協会編著(幻冬舎)

→紀伊國屋書店で購入 小説家ってどうやって小説を書いているのでしょう。私には未だにわかりません。大学では文芸を専攻し、小説の学校にも通いましたが、そういうところには作家という肩書きの先生方はいても、リアルタイムで作品を書き生き馬の目を抜く出…

『呪いの時代』内田樹(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「『呪いの時代』を乗り越える処方箋」 著者の論述には、意外性や逆転の発想がこれでもかというくらい詰まっていて毎回引き込まれる。「呪いの時代」というタイトルを目にしたとき、評者がイメージしたのは「呪いや占いのようなスピリチ…

『創造する東アジア-文明・文化・ニヒリズム』小倉紀蔵(春秋社)

→紀伊國屋書店で購入 まず主題を見てちょっと気になったが、副題を見てわたしにはわからない本だと思った。つぎに帯の背の「自己の中の他者との邂逅」を見て、別世界の話だと思った。帯の表、裏には、それぞれつぎのように書かれていた。「絶対的な他者など…

『「本屋」は死なない』石橋 毅史(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「書店ファンによる、書店ファンのための、書店員の物語」 先日、印刷関係の人と話をしていて、最近電車の中で週刊誌を読んでいるおじさんをすっかり見なくなった、という話になった。たしかにそうだ。ひと昔まえは、一両に少なくとも4…

『不作法のすすめ』吉行淳之介(中公文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「遊郭と退屈とダンディの奇妙な三角関係」 退屈はたいへん深遠なテーマである。でも、なぜか正面からは語りにくい。その理由は…?などと國分さんのおかげで考えはじめたときに、ちょうど良い本を手に取った。吉行淳之介『不作法のすす…

『Paris to the Moon』Adam Gopnik(Random House)

→紀伊國屋書店で購入 「ニューヨーカー誌に連載されたパリ・ジャーナル」 この本は『ニューヨーカー』誌にエッセイを掲載してきたエッセイスト、アダム・ゴプニックのエッセイ集。ニューヨークに住んでいたゴプニックがパリに移り住んでからの作品が収められ…

『ナショナリズムは悪なのか』萱野稔人(NHK出版)

→紀伊國屋書店で購入 「グローバル化に抗うため、あえてナショナリズムを擁護する」 本書は、哲学者であり津田塾大学准教授の萱野稔人によって書かれた論争的な著作である。 萱野氏には『権力の読み方』(青土社)など本格的な専門書の著作もあるが、いずれ…