書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『草の根グローバリゼーション-世界遺産棚田村の文化実践と生活戦略』清水展(京都大学学術出版会)

→紀伊國屋書店で購入 本書は、著者、清水展(ひろむ)が1997年から2009年までの12年間に毎年必ず1度は調査村である北部ルソン山地のイフガオ州ハパオ村に出かけ、集中的な調査をおこなった成果である。本書の論述と考察の中心は、ふたりの男の活動と語りである…

『ピアノと日本人』斎藤信哉(DU BOOKS)

→紀伊國屋書店で購入 ピアノを教えることは、私の大切な仕事のひとつだ。そんな時に折に触れて使う表現がある。曰く「そんなふうにピアノの調律師みたいな弾き方で音を出してはいけません」。感性の良い学生はこの言葉だけで納得し、音の響きが即座に変わる…

『呑めば、都』マイク・モラスキー(筑摩書房)

→紀伊國屋書店で購入 「禁欲的飲酒法」 春の飲み歩き本シリーズ第二弾。今回はマイク・モラスキー氏の『呑めば、都』をとりあげたい。先月見た大竹聡さんの『ひとりフラぶら散歩酒』と読みくらべるとおもしろい本だ。どちらも最大の目的がひとりでふらふら飲…

『Tenth of December』George Saunders(Random House)

→紀伊國屋書店で購入 「独特の作風が光る短編集」 1958年にアメリカのテキサス州で生まれたジョージ・サウンダースはいま、アメリカを代表する短編作家といわれている。 これまでサウンダースの作品を読んで、寓話的というか、サイエンスフィクション的とい…

『デフレーション』吉川洋(日本経済新聞出版社)

→紀伊國屋書店で購入 「デフレをどう捉えるか」 経済学はアダム・スミスの昔から優れて実践的な学問であったが、バブル崩壊後の日本経済が長いあいだ低迷し続けるうちに「デフレからの脱却」という課題が急浮上するようになった。だが、経済学者やエコノミス…

『ホロコースト後のユダヤ人-約束の土地は何処か』野村真理(世界思想社)

→紀伊國屋書店で購入 「ホロコーストの嵐が吹き荒れるなか、ユダヤ人に逃走する理由がありすぎるほどあったとすれば、戦後、彼らはなぜ、もとの居住地に帰還して生活を再建せず、ヨーロッパを去ったのか。彼らは、どこに行きたかったのか」と、著者野村真理…