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プロの読み手による書評ブログ

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『人類の進化大図鑑』 アリス・ロバーツ編 (河出書房新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 『人類20万年 遙かなる旅路』のアリス・ロバーツが企画・編集した図鑑である。すこし前に邦訳されたストリンガー&アンドリュースの『人類進化大全』が専門的に勉強したい人向けなのに対し、こちらは一般読者向けの図鑑であり、…

『人類20万年 遙かなる旅路』 アリス・ロバーツ (文藝春秋)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 2009年にBBCで5回シリーズとして放映された「The Incredible Human Journey」の書籍化である。異なる立場の意見も丁寧に紹介されており、現時点で人類のグレート・ジャーニーものとしてはもっとも内容豊かで信頼できる本だと思…

『牛腸茂雄写真 - こども』牛腸茂雄(白水社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「そのままの子供」 2002年の夏、ある印刷教育に関する勉強会で、写真家の三浦和人氏の話を聞く機会があった。「写真における技術と感性」がテーマで、同じ写真をグラビア印刷した初版本とオフセット印刷した復刊本を見比べたり…

『エビと日本人』村井吉敬(岩波新書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書が出版された1988年に、『あるくみるきく』が廃刊になった。民俗学者、宮本常一が所長を務めていた日本観光文化研究所から1967年に創刊された雑誌である。研究所も翌1989年に解散した。「あるく」「みる」「きく」は、宮本…

『「幸せ」の経済学』橘木俊詔(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「幸せ」とは何か」 「幸せ」とは何か――この問題に答えるのは難しい。経済学者は国際比較をするとき、一人当たりの所得に注目しがちだが、この方法は昔から経済学者以外の人たちから批判されてきた。それゆえ、経済学者も過去…

『Daddy is Fat』Jim Gaffigan(Crown )

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「NYの2ベッドルーム・アパートで5人の子供を育てる法」 ニューヨークに住んでいるコメディアン、ジム・ガフィガンはバワリーと呼ばれるイーストサイド・ダウタウンにある通りの5階建てエレベーター無しのビルに住んでいる。…

『戦争社会学の構想-制度・体験・メディア』福間良明・野上元・蘭信三・石原俊編(勉誠出版)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 まず、いろいろ学ばなければならないことがたくさんあることを教えられた。第Ⅰ部「「戦争」研究の系譜と社会学」では、「この分野を切り拓いてきた代表的な研究者」から、「自らの学問を生み出すに至った経緯やその社会的・学問…

『山里に描き暮らす』渡辺隆次(みすず書房)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「そもそもが居候、キタリモンをきめこんだ絵描き屋の庭はアジールとなる」 《なんにしても、群れるのはイヤ》。東京で絵を教えながら画家として過ごしていた渡辺隆次さんは36年前、38歳でひとり八ヶ岳南麓に土地を得てアトリエ…

『僕は問題ありません』宮崎夏次系(講談社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 またもや衝動買いです。 地元の書店をうろうろしていた私は、新刊の棚にこの漫画があるのを見て、そのままレジへ向かってしまいました。『僕は問題ありません』といういかにも問題がありそうなタイトルも気になりますし、表紙に…

『レナード・バーンスタイン わが音楽的人生』レナード・バーンスタイン(作品社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「優れた知性を備えた音楽家レナード・バーンスタイン」 先日(8月25日)、レナード・バーンスタイン(1918-90)がもし生きていれば95歳になることを知った。彼が亡くなったのは72歳のときだから、もう20年以上も経ってしまったこ…

『ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス 生涯とその思想』イスラエル・M・カーズナー(春秋社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ハイエクの影に隠れたネオ・オーストリア学派の先駆者」 まだ大学院生の頃、ネオ・オーストリア学派についての書評論文を書いたことがあった(注1)。四半世紀も前のことだが、その頃、オーストリア学派の流れをくむルートヴィ…