書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2015-01-01から1年間の記事一覧

『近代日本の「南進」と沖縄』後藤乾一(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 沖縄の問題は、近代日本そのものが問われるものであり、沖縄にとってだけでなく東アジアにとっての日本問題であったことが、本書を通じてわかってくる。帯にある「現代につながる難問を解く鍵は、沖縄にある」という意味を理解…

『廃墟の零年1945』イアン・ブルマ著、三浦元博・軍司泰史訳(白水社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「いまに続く戦後の原点」 以下の書評を、共同通信から2015年3月5日に配信した。 まず、本書を読むと、戦勝も敗戦も意味をなさないほどの混迷状況のなかで、第2次大戦直後にさまざまな悲劇が起こったことがわかる。この事実を知…

『アウンサンスーチーのビルマ-民主化と国民和解への道』根本敬(岩波現代全書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書巻末の「参考文献」の「日本語文献」だけみても、アウンサンスーチー著6冊、「アウンサンスーチー」をタイトルにした書籍5冊がある。言説だけが先行し、2012年4月に下院議員に当選してからの実際の政治的手腕に疑問をもつ内…

『ナイチンゲールの末裔たち-<看護>から読みなおす第一次世界大戦』荒木映子(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ナイチンゲール」のタイトルに惹かれて、本書を手にとった人がいるかもしれない。「看護師と雑役婦とが判別しにくかったこの時代に、下層階級から看護を取り戻し、看護師の社会的地位を高めた」ナイチンゲール(1820-1910)の…

『日の丸が島々を席捲した日々-フィリピン人の記憶と省察』レナト・コンスタンティーノ編、水藤眞樹太訳(マニラ新聞)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「本書は当初、日本人読者向けの出版物として企画され」たが、1993年に英語の原文がフィリピンで出版されたままになっていた。その「序」で、編者のレナト・コンスタンティーノは、つぎのように述べている。「日本人はこの間の…

『フィリピンの独立と日本-リカルテ将軍とラウレル大統領』寺見元恵(彩流社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書は、「15歳からの「伝記で知るアジアの近現代史」シリーズ」の3冊目である。このシリーズについて、裏表紙見返しでつぎのように説明されている。「欧米中心の偉人伝とは一線を画す、アジアの伝記シリーズ。本シリーズは、そ…

『新興大国インドネシアの宗教市場と政治』見市建(NTT出版)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「二〇一四年七月、大接戦の末、インドネシアに庶民出身の大統領が誕生した。混迷する中東や他のイスラームとは対照的に、宗教は社会に安定的に浸透している。民主化の進展とあいまって、インドネシアは二億五千万人の人口を背…