第13位『すべて真夜中の恋人たち』川上未映子
(講談社/1,680円)
世間から見向きもされない透明な存在だった冬子は、自分が孤独であることを引き受けることによって、確固たる一個人の尊厳を手に入れた。たとえ暗闇の中にも光はある。それは、孤独な自分に気づくことでようやく見つけられるのだ。その光に、なま温かい温度や癒しはないけれど、その粒子は確実に未来を照らす。こんなどこか素っ気ないかもしれないメッセージに私はどうしても感動してしまう。昨年、多くの人が孤独をひしひしと恐れ、また孤独にならざるを得なかった中、半端な癒しなどどうにもならないことを痛感した私たちにとって、これほど明解で勇気づけられるメッセージはあるだろうか。
〔大学第二営業部・香川増美〕